2007/7/28 (土)

キュベット : 200707 大学院、“なんとなく”進学していませんか?

 

インターネットや書店で大学院を案内する資料をよく目にする。とくに、大学院生や有名教授のインタビュー、入試攻略法などが多いようだ。これらの情報は、進学意欲を高め、大学院での生活を実感するのに有効かもしれない。入りたい研究室や就職活動までのビジョンがすでに明確ならばそれもよいだろう。しかし、大学院進学を希望する学生の多くは、実は”なんとなく”進学を決めているのではないだろうか。

有名研究者の自伝やインタビューなどでは、”なんとなく”進学先を選んで成功したという場面もあるだろう。むしろ、明確な将来像をもって進学するほうが少ないかもしれない。しかし、時代は変わりつつある。すでに知っているとは思うが、大学院重点化やポスドク1万人計画といった国の政策により、1990年以降、大学院生とポスドクは急増している。一方で、彼らの就職先が十分に増えなかったため、就職できないまま路頭に迷ってしまう場面が増えるという問題も予想されている。

企業に就職するのであれ、大学に残って安定したポスト(教授など)をめざすのであれ、いずれにせよ厳しい競争社会が待ち受けている。大学院進学をめざすなら、”なんとなく”進学して成功した先人の話に踊らされず、自らのキャリア計画にそった戦略を練る必要がある。そうはいっても、進学におけるさまざまな問題点を網羅することは困難だ。進学に関しては景気のよい話(研究はおもしろいとか、理系は大学院にいくべきとか、名門大学の大学院に進学して学歴をリセットできる、など)があふれていたり、大学院生とポスドクが直面する現実的な問題にフォーカスした情報は決して多くはない。

では、大学院への進路選択では何を考慮すべきなのか。まずは、自らの進学のタイプをはっきりさせることが重要だ。大学院問題に取り組 んでいるNPO法人サイエンス・コミュニケーション(http://scicom.jp/)では、進学におけるさまざまな問題 の発生を防ぐ方法を提案している。そのなかで、大学院への曲型的な進路選択を2つのタイプに分類し、志望するキャリアにあわせて研究室を選ぶことを推奨している。そのひとつは”修士タイプ進学”で、修士課程終了後に企業就職を目指すパターンである。もうひとつは”博士タイプ進学”で、大学研究者などのアカ デミックキャリアをめざすパターンである。修士課程と博士課程は手続きのうえでは連続しているため、一見するとこのように2つのタイプに分ける必要は感じられ ないかもしれない。しかし、企業への就職活動に不向きな研究室(指導教員が就職活動に非協力的、就職 実績が悪い、など)もあれば、研究キャリア形成に不向きな研究室(論文が出てない、博士号取得者が少ない、など)もあり、自分がどちらのタイプなのかをよく考えて研究室とのミスマッチを防ぐ必要がある。

ほかにも考慮すべき問題は多い。学位取得における複雑な事情、就職活動のむずかしさ、研究室独特の人間関係によって生じるアカハラやセクハラ、若者なら誰もが悩む結婚や出産や育児、そして、お金や大学院留学など、大学院生が直面する 問題は多岐にわたる。これらの問題をひとりで抱えてしまわないように、大学院問題について解説された情報が必要だ。幸いにも、ようやくこの種の問題が認知 されるようになり、報道でも余剰博士などの問題が取り上げられるようになってきた。ガイドとなる書籍なども徐々に出てきている(理工系&バイオ系 失敗しない大学院進学ガイド、サイエンス・コミュニケーション+日本評論社編集部 編著、日本評論社、2006など)。しかし、まだ十分とはいいがたい。大学院進学をめざす学生は、希望する進路や自分のおかれた状況を考え、もっと情報を集めてほしい。また、大学院問題を扱う学生の集まり(生化学若い研究者の会2007夏の学校など)にも積極的に参加してほしい。










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