2007/8/28 (火)

キュベット : 200708 キャリアサポートからみたバイオ分野の博士号取得者の就職

 近年、博士号を取得しても職を得られない例が増えている。研究人材調査によると、博士号取得者の育成にかかる税金は1人あたり約1億円と試算されている。たとえば国立大学の場合、博士号取得までに国から大学へ運営費交付金が支給され(330万円×9年間)、その後、日本学術振興会から給与と研究費が支給されている(1200万円×6年間)。税金による投資によって高度な教育をうけた博士号取得者が職につかないことは、社会にとっても大きな損失である。専門分野別にみると、とくにバイオ系でこの傾向が顕著である。きびしい就職環境のなか、自力で職を得られない博士号取得者に対して、国、大学、および、民間企業が、キャリアパスの多様性を提案するというかたちでキャリアサポートに力を入れはじめている。売り手市場である工学などの分野に比べ、バイオ分野の就職先は明らかに少ないため、バイオ分野において培った専門性を100%活かすことのできる職業につくことは非常にまれなことであろう。ここでは、狭き門ではあるが、開かれているバイオ分野の企業について紹介する。  バイオ分野の専門性を活かせる企業の代表として、製薬企業があげられる。現在、国内の製薬企業では基盤研究がどんどん減衰しており、代わりに、臨床開発のできる人材が求められている。これは、世界の製薬企業に遅れをとったわが国の製薬企業が、欧米で新薬開発に成功したバイオベンチャー会社を買収したのち、ひきつづいて自社による臨床開発に注力していることによる。これから大手製薬企業への就職をめざすなら、臨床開発に目をむけるといいだろう。基盤研究がしたい人はバイオベンチャーにいくといい。  つぎに、このバイオベンチャーについて少し述べよう。21世紀に入ってからハイペースで増加しつづけるバイオベンチャーだが、医薬品、研究支援、農林水産、環境などに分類されるものが大部分を占める。よって、バイオベンチャーにとって大手製薬企業などとの提携は必要不可欠である。しかし残念なことに、国内の大手製薬企業が提携しているバイオベンチャーはほとんど国外のものであり、国内バイオベンチャーの力不足がめだつ。また、欧米に比べわが国のバイオベンチャーへの投資額ははるかに小額であるため、研究開発はどうしても短期間で小規模のものになりがちである。このように、わが国ではバイオベンチャーが育ちにくいような悪循環が起こってしまっている。有能な人材の国外への流出を防ぐためにも、わが国の大手製薬企業には国内バイオベンチャーへの投資増強を考慮してほしいものである。  博士号取得者にとって、バイオベンチャーに身を投じて基盤研究に従事し、専門性を活かすことはおおきな魅力である。ただし、会社選びに際しては、その現状を正確に把握しておくことも重要であろう。そこで具体的な情報収集方法として、キャリアサポートを行っている企業や大学では、就職を控えたか博士号取得者を対象とするセミナーを開催しているので、これに参加してみてはどうだろうか。この種のセミナーは、対象がバイオ博士号取得者に特化されているので、大手バイオ企業、バイオベンチャーへの就職情報はもちろん、それ以外についても多様性に富んだ就職を具体的に提案しており、それにより不必要な閉塞感からのがれることができるかもしれない。また、あまり知られていないが、海外企業の出資による海外の大学への留学というかたちで、奨学研究員の公募なども紹介していたりする。  博士号取得者、とくにバイオ分野の出身者が自力で希望にそった就職にたどり着くのは非常に困難である。さらに、ポスドクなど給与を得ている研究員であれば、大学院生のように就職活動で何十社も渡り歩くのは不可能であろう。学術セミナーにすら参加することがむずかしい多忙な研究者にとって、キャリアセミナーに参加するなど論外かもしれないが、ぜひとも考慮してみてほしい、博士号を取得したのち、いかに自分のキャリアアップにつなげるか、まわりに流されず、柔軟で自由な発想で望む針路をとってほしい。










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