2007/11/28 (水)

キュベット : 200711 企業での研究と大学での研究の違い

 筆者はある製薬企業の研究開発部に勤めていますが、企業での研究と大学での研究の違いについて、学生から聞かれることがあります。今回、その違いについてまとめる機会が得られたので、質疑応答のかたちで記したいと思います。なお、ここでの内容がすべての企業にあてはまるとはかぎらないことに注意してください。 Q.企業の研究と大学の研究の大きな違いはなんでしょうか? A.いちばんの違いはタイムリミットだと思います。企業の研究プロジェクトは、一定期間内に成果が出なければ打ち切られます。成果の内容としても具体的なものが求められます。ですから、企業では製品化する価値があるかどうかはっきりしない研究はとてもむずかしいと思います。ただし、企業のなかでも基礎研究を行なう部門に関しては大学に近いと思います。もうひとつの違いは、研究資源です。企業のほうが人員や研究費、情報量などが豊富だと感じます。 Q.製品開発の締切厳守の厳しさについてくわしく教えてください A.企業では相対的に有望なプロジェクトが優先されるので、他に有望なプロジェクトが出てきたときには、それまでのプロジェクトが打ち切られることがあります。大学ではプロジェクトが打ち切られることはないかもしれませんが、企業では自分のプロジェクトを中断して他人のプロジェクトの手伝いや新規プロジェクトの立ち上げにまわらなければならないこともあります。これをよいと感じるかどうかは人それぞれですが、ひとりでプロジェクトの行き詰まりに悩むことが少ないのはメリットです。 Q.基礎研究部門は短期間では利益に結びつかない部署だと思いますが、今後も企業のなかで生き残れるのでしょうか A.私見ですが、ますます厳しくなっていくのではないでしょうか。基礎研究部門に対する他部門の視線を冷たく感じることもあります。結果が出なければベンチャー企業として切り離されるかもしれません。ただし、企業にも独自のターゲットへのこだわりと期待は残っていますので、ここ数年が生き残るチャンスだと思います。 Q.企業では研究者個人の業績はどのように評価されるのか知りたいです。チームワークが重要というのは、個人が埋没してしまうということなのでしょうか? A.各個人のプロジェクトへの貢献度をリーダーが評価します。大学でのゼミは研究の進捗状況の報告が主だと思いますが、企業ではそれに加えて、評価面談においてプロジェクトの達成度に対する自己採点とその根拠をプレンテーションする必要があります。自己採点に関する評価基準は明示されているのですが、評価の厳しさはリーダーによって異なります。研究の世界では自分の主張の正しさを実験結果で証明することができるので、個人が埋没することはないと思います。 Q.企業で求められている能力は何ですか?その能力を大学で身につけることはできますか? A.個人の研究能力が求められるのは当然ですが、企業では、Win-Winの関係を築く能力、つまり、ほかのメンバーへの貢献、情報の共有化もかなり求められると思います。どんなに優秀な研究者でも、ひとりで出せる成果には限りがあります。とくに、スピードをも求めた場合には他社との強調が不可欠です。他者と強調する際は、他者の強みに頼るだけではなく、自分の強みも提供する必要があります。自分の強みをもつためには、自分の専門分野に関する知識やスキルをつねに更新しなくてはいけません。これらの能力は大学でも身につけることができると思います。たとえば、外部の研究機関と共同で論文を作成する際などには、このような能力が求められると思います。ただ、企業で求められる能力は企業に入ってからでも身につけることができるので、準備にあせる必要はないのではないでしょうか。  簡単な質疑応答でしたが、そろそろ就職活動がはじまる時期ですので、企業の研究開発に興味のある方の参考になれば幸いです。










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