2007/12/28 (金)

キュベット : 200712 博士号を取得したら研究職に就かないといけないのか?

 博士課程を修了した人やポスドクの人気を終えた人の就職先不足がマスコミで大きく報道されるようになった。この背景には、博士号取得者の就職問題が深刻化しており、その根本的な解決のめどがいまだ立っていないことがある。しかし筆者は、一連の報道をみていると違和感がある。それは、ほとんどの報道が”博士号取得者の進路は、国の研究機関や大手メーカーの研究職しかない”という前提のもとで話を進めているように感じられることである。報道では研究職につけない博士号取得者の存在がくり返し取り上げられているが、このことからは、研究職のポストが少ないことはいえても、それ以外の就職先がないことをいえるわけではない。案外、博士号取得者には研究職以外の就職先があるのではないだろうか。

 最近では、博士号取得後に研究以外のビジネスで活躍している人たちをマスコミやWeb上でみかけるようになった。また、大学院生やポスドクを対象にした研究職以外の仕事を紹介するサービス(たとえば、株式会社DFS http://www.d-f-s.biz/, 名古屋大学ノン・リサーチ キャリアパス支援事業http://www.career-path.jp/)が生まれていることからも、博士号取得後に研究職以外の仕事に就くという選択肢の存在することがわかる。では、これまでこれらの進路を考慮することが少なかったのはなぜか。その原因を探り、簡単に対策を考えてみたい。

 まず、研究職以外の道に進むという選択肢に気づけない人が多いという原因をあげたい。というのも、これまで博士号取得者が研究職以外の仕事を選ぶケースはまれで、先輩などから進路情報を得られる機会も少なかったからだ。しかし現在では、研究職以外の分野で活躍する博士号取得者はだんだんと増えているし、研究職以外の選択肢に関する情報もWebなどで得られるようになった。新たな活躍の場をみつける絶好のチャンス到来ではないか。

 つぎに、研究職以外の仕事に就くにあたり、大学院で学んだことが無駄になるという抵抗感も原因になっていると考えられる。しかし、筆者はそうは思わない。博士号取得の過程で培ってきた、論理的な思考力や情報収集能力、社会の役に立ちたいという情熱を生かす機会は、研究室の外にもあるはずだ。ビジネスの現場で頭を使わないといけない場面、たとえば、利益を上げるための新しいしくみの開発や、顧客との信頼関係を保つための工夫など、枚挙にいとまがない。そんなときに能力を発揮して結果を出せば、研究と同様に知的好奇心を満足させられるのではないか。博士号取得後、技術営業、ベンチャキャピタリスと、経営コンサルタントなどで能力を発揮している人をよく目にするようになったが、このほかの分野にも力を発揮できる場所は存在すると思われる。

 そのほかの原因として、なんとしても研究職に就いて活躍したいという理想や、研究職に就けなかった者は”負け組”であるという偏見もあるのではないだろうか。しかし、研究職以外はつまらない仕事ばかり、ということは決してない。研究と同様に知的好奇心を刺激する仕事、頭の回転を猛烈に必要とする仕事、世の中の発展に寄与する仕事は、確実に存在する。偏見をもつ人たちこそ、自分の能力を生かせる新しい活躍の場があることに気づいてほしい。あなたの指導教員や先輩の通った道を、あなたもなぞらなければならないということはないのだから。

 博士号取得者が研究職以外の仕事をみつけられる環境は徐々に整ってきている。もちろん、企業に応募すればすぐに採用されるほど就職活動は甘くない。しかし、博士号取得者に活躍の場を与える企業が存在するのも事実である。進路の変更は年が若いほどスムーズに行える。とくに博士課程の大学院生や若いポスドクは、この選択肢を真剣に検討してみてはどうだろうか。










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