2008/6/28 (土)

キュベット : 200806 国立大学の大学院博士課程への経済援助開始

 

 最近、博士課程に在籍する大学院生への大規模な経済的支援が国立大学4校においてあいついで発表された(2008年5月号 本欄 参照)。今後、ほかの国立大学においても大規模な経済的支援が行われれば、私立大学の大学院博士課程への進学希望者が減少する可能性が考えられる。私立大学は、大学院生への経済的支援についてどのようにとらえているのだろうか。麻布大学の政岡俊夫学長に話を聞いた。

 

Q 麻布大学では、博士課程の大学院生に対して経済的支援を行っていますか。

A 1998年度から、博士課程の大学院生を教員の研究を補助するリサーチアシスタントとして雇用し、年間60万円を支給しています。2008年度は3000万円の予算を確保しており、全員をリサーチアシスタントとして雇用することが可能です(2007年度は、大学院博士課程には34名が在籍)。

 

Q 大学が博士課程の大学院生へ経済的援助を行った際、大学側のメリットとしてどのようなことがあげられますか。

A 優秀な大学院生を確保することが期待できます。経済的支援のみで確保できるとは考えていませんが、本大学院の博士課程へ進学を希望している人が、経済的な要因によりほかの大学院へ進学することを避けることはできると思います。

 

Q 国立大学が大規模な経済的支援を行うことにより、麻布大学の大学院博士課程へ進学を希望する人が流出する可能性はありますか。

A 学費が安いからといって本大学院への進学を希望する人がほかの大学院に進路を変更するとは考えにくいのですが、本大学院の特色のある分野の確立が必要になるでしょう。

 

Q ほかの大学と比較して、麻布大学が大学院博士課程の院生を得るために有利な点はありますか。

A 本大学院では、リサーチアシスタント制度以外にも、博士課程の大学院生1人あたりの研究予算として85万円が与えられ、さらに、学会出張の際の旅費も支給されます。しかし、このような経済的支援を公表したのは一昨年からです。本大学院がそうであったように、ほかの大学院でも経済的支援が行われているにもかかわらず発表していない場合があり、これに関して比較するのはむずかしいのが現状です。

 

Q 現在、いわゆるポスドク問題が報じられていますが、麻布大学は大学院博士課程の院生に対してどのような教育や就職のサポートを行っていますか。

A 大学や他の研究機関に勤務して研究を行うには、いずれの場合も定員があるため、希望するすべての大学院生が研究機関で職を得られるとは限りません。このため、本大学院では、大学に無料で在籍できる共同研究員というポジションを設けています。また、民間企業では幅広い知識と思考の柔軟性が求められています。このため、毎月、外部から講師を招いて講演会を開催しています。大学院生の教育は指導教員の能力によるところが大きいので、大学院生には研究室に閉じこもらず、自ら学会や研究会などに参加することを期待しています。

 

 すでに、麻布大学においては博士課程の大学院生に対する大規模な経済的支援が行われており、3年間の学費の総額は、一般的な国立大学のおよそ半分であった。しかし、学外の進学希望者がこういった制度を知る機会はほとんどないであろう。一般に、私立大学は国立大学よりも学費が高いと思われがちである。経済的要因で進学を思い悩む人は、まず国立大学を志望するだろう。この常識を覆すには、私立大学は経済的支援の存在をもっとアピールするべきではないだろうか。

 

犬飼直人(キュベット委員会)

 










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