2009/1/28 (水)

キュベット : 200901 とあるバイオ系修士課程大学院生の就職活動体験談

 バイオ系の修士課程1年生として就職活動を経験し、最終的にIT企業への内定を得た筆者の体験談を紹介したい。現在、就活中の方の参考になれば幸いである。

 

 就職活動をはじめたのは修士課程1年の秋ごろ、企業の採用ページがオープンする時期であった。筆者は大学で食品関連の研究をしており、食品企業でそれを活かして人々の健康に貢献したいと夢みていた。しかし、食品企業の研究職といえば、製薬企業に次いで人気の高い職種。字際に夢をつかみとれるのはほんの一握りの人だけである。連日、エントリーシートを書くが選考で落とされることを繰り返すうち、なぜそこまでして食品企業に行きたいのかわからなくなり、自信を喪失してしまうこともあった。

 幸い、筆者には話を聞いてくれる先輩や友人がいたので、よく相談し、アドバイスをもらうことができた。また、リクルートエージェントの就職サービスなどを積極的に利用して面談などの機会を得ながら、自分がなにをいちばんやりたいのかを真剣に考えるようにもなった。自分の考えを人に話したり相手の意見を聞いたりすることは、自己分析を進めるうえでも役に立つし、コミュニケーションの訓練にもなるため面接にも活かせたと感じている。その結果、筆者は社会に役立つ仕事をすることにやりがいを感じるということがみえてきた。そして、それを実現する手段は必ずしも研究職でなくてもよいことに気づき、なにをめざすべきかわからないでいた。

 

 そんななか、就職サービスの面談で紹介されたのがIT系の企業であった。ITというと、バイオの研究とは無縁の世界と感じられるかもしれないが、バイオ系の出身でIT系をめざす人は意外に多い(それは、バイオ系の就職がいかにきびしいかを反映しているのかもしれない)。紹介された当初は研究の経験が活かせない分野なので興味も薄かったのだが、IT技術というものはわれわれの生活のさまざまなところで役に立っており、応用の幅が広いところに魅力を感じはじめた。また、IT系は募集分野を指定していないことが多く、さまざまな分野に対応していくために多様なバックグラウンドをもつ人を求めることがあったり、研究生活をとおして得られた(単なる知識の蓄積でない)経験を重視したいという企業の思惑もあったりするようだ。企業によっては製薬企業や食品企業とやりとりをすることもあり、そのときは生命科学を学んできた経験を活かすことができる。これまで勉強してきたことは決してむだではないし、IT技術を勉強することで逆に自分の活躍の幅が広がるとも感じられた。

 そののち、筆者は徐々にIT系の企業を多く受けるようになり、とある企業から内定を得ることができた。自分のやりたいことを実現するために、これからも新しいことを勉強していきたいと考えている。

 

 筆者は合計で30社ほどの会社を受けた。これは就職活動をしている人のなかでは決して多い数ではないが、ピーク時にはほぼ毎日、スーツを着て出かけていた。そのため、日中は面接、夜は研究室に戻って終電まで実験…、という日々が続き、さらに、研究室のゼミの予定なども入り乱れて、その両立には非常に苦労した。筆者のように、就職活動と研究生活の両立で苦労する人は多い。完璧にこなすことは不可能であるから、やるべきことに優先順位をつけて、限られた時間のなかで最大限の努力をする、というスタンスが大切だと思う(もちろん、これは就職活動に限ったことではない)。修士課程は2年間と、とにかく短い。自分の裁量と相談して、ときには誰かに助けてもらいながら、この難関を乗り越えてほしい。

 バイオ系の大学院生のほとんどが製薬企業または食品企業の研究職を希望している。しかし、周囲に流されるのではなく、もっと広く世界を見て、本当に自分のやりたいことをしっかいりと考えたうえで決めてほしい。いちどきりの就職活動である。そのときどきの出会いを大切にしながら、自分を信じてがんばってほしい。

 

九石裕美子

(東京大学大学院農学生命科学研究科)










© 2017 生化学若い研究者の会 all rights reserved.