2009/6/29 (月)

キュベット : 200906 生物学版のロボットコンテスト、iGEM

   

はじめに

 2008年11月、米国Massachusetts工科大学(MIT)において、生物学版のロボットコンテスト(ロボコン)であるiGEM(The international genetically engineered machine competition、国際大学対抗遺伝子工学技術応用機械コンペティション、http://2008.igem.org/Main_Page)が開催された。本格化して3年目をむかえた今回のiGEM2008には、21カ国から84チームが参加し、そのなかには、米国Harvard大学、MIT、米国California工科大学(CalTech)、中国清華大学など、各国の有名大学が出場していた。わが国からは、東京工業大学、千葉大学、京都大学が出場した。本稿では、東京工業大学のメンバーとして参加した筆者の体験を紹介したい。

 

iGEMとは?

 iGEMとは”細胞ロボット”をつくる合成生物学の国際コンペで、おもに大学の学部生をその対象としている。各チームは毎年11月にMITで開催される大会で研究成果を発表し、審査員からの評価にもとづき賞が授与される。

 細胞ロボットをつくるにあたって、iGEMでは、BioBrickとよばれる規格化された遺伝子パーツを組み合わせることで新しい生命システムの設計と構築を行う。これには、分子生物学実験(ウエット)とコンピュータシュミレーション(ドライ)の協同作業が欠かせない。細胞に目的の動作をさせるために、遺伝子による人工的な制御ネットワーク(遺伝子回路)を細胞に導入する。しかし、遺伝子回路は往々にして思い通りには動作しない。そこで、コンピュータシュミレーションで得られたデータをもとに、遺伝子回路の微修正を行う。このような作業をくり返すことで細胞ロボットはつくられるのである。

 iGEMに特定のテーマはない。したがって、各チームは思い思いデザインした細胞ロボットを発表する。たとえば、過去に発表された研究、”バクテリアでつくった感光フィルム”や”バナナの匂いのする大腸菌”などは、一見、突拍子もないテーマだが、これらは医療や環境・エネルギー産業などの分野に応用される可能性を秘めている。今回、筆者らのテーマは、”Coli Touch:圧力応答するバクテリアでタッチパネルをつくる”であった。バクテリアを圧力で制御するというiGEM初のアイデアが評価され、金賞の栄誉に輝くことができた(84チーム中、16チームが金賞を受賞)。

 

iGEMの魅力

 iGEMの魅力を2つあげたい。真骨頂ともいえる1つ目の魅力は、MITで開催される国際大会であり世界各国の大学と研究発表で勝負できることである。筆者にとって、MITやHarvard大学の学生は憧れでしかなかった。しかし、iGEMでは彼らと同じ舞台のうえで互いの実力をぶつけあえたことに、興奮と喜びを感じることができた。そして2つ目は、学部生は研究室のテーマにしばられず自分のオリジナルなテーマで研究できることだ。この2つの魅力は、日本の大学の研究室ではなかなか経験できることではない。それを研究室に所属する以前の学部生が経験できる。ここに、iGEMに参加する大きな魅力がある。

 

iGEMで得たもの

iGEMが終わって半年が経ったが、いまなお思いつづけていることがある。それは、世界を相手に勝負したいという気持ちだ。自信をもって乗り込んだiGEMでは、海外チームの優秀さに圧倒されつづけた。プロジェクトの難易度、実験量、プレゼン力の高さなどを目のあたりにして、これが本当に同世代なのかと驚いた。そんな自分の感覚にもかかわらず金賞を受賞することができた。これは、努力すれば世界を相手に勝負できるという大きな自信になり、つぎは本物の研究で世界を相手に勝負したいという気持ちにつながった。

 iGEMでは世界中の学生が研究をつうじて互いを刺激しあっている。こんな体験はiGEMからでしか得られないかもしれない。

 

おわりに

 iGEMに参加するチームは毎年増えており、2009年は、わが国からも新たに東京大学などの数校が参戦にむけた計画を開始している。これからiGEMに参加する人には、ぜひ全力で挑戦し世界と勝負する楽しさを味わってほしい。

 

梶田真司(東京工業大学生命理工学部)

E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org

 










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