2009/7/29 (水)

キュベット : 200907 意外とおいしい大学院留学:前編

 

 大学院留学を考えている学生はどれくらいいるのだろうか.中国や韓国といったアジア各国に比べて,大学院留学する日本人の割合は少ない.これは,多くの日本人が大学院留学のメリットを知らないからではないか.本稿では,大学院留学の虜となった筆者がその魅力を紹介する.ひとりでも多くの人に大学院留学のよさを共有してもらえるよう筆を進めていきたい.

 

 これまで,多くの日本人が海外の大学院で博士号を取得し活躍している.著名な例としては,米国 California 大学 San Diego 校で博士号を取得し,のちにノーベル医学生理学賞を受賞した利根川 進博士がいる.利根川博士が留学したのは50年もまえのことで,海外に行くことすらむずかしかった時代であり,たいへんな英断であったと思う.しかし,現在では海外はずっと身近な存在になり,まして,生命科学において国境はおおきな意味をもたない.このような状況において,日本の大学院だけではなく,海外の大学院をも進路の選択肢のひとつとしてよいのではないだろうか.大学院留学のメリットを考えると,その選択肢はより魅力的なものとなる.以下に大学院留学のメリットを2つあげる.

 

【金銭的なサポート】

 米国の大学院では金銭的なサポートが充実している.日本の大学院生は学費と生活費の両方を工面する必要があり,これが大きな負担となっている.一方,米国の大学院生は授業料の免除ばかりか,ほとんどが生活費の支給まで受けている (例:Rockefeller 大学では年間31,000 ドル, Northwestern 大学では年間 27,000 ドル) .もちろん,豪奢な暮らしは望めないが,日本より生活費の安いことも手伝って,自炊ならば一人身には十分な金額である.

 さらに,にほんでも留学生むけの奨学金制度がさまざまな団体から用意されている.受給期間や金額,応募条件などを検討し,自分にあった奨学金をみつけだすことができるだろう.留学についての基礎情報は,日本学生支援機構 http://www.jasso.go.jp/study_a/oversea_info.html を参照してほしい.博士号または修士号の取得をめざす場合は,本庄国際奨学財団 http://www.hisf.or.jp/,中島記念国際交流財団 http://www.nakajimafound.miinet.or.jp/村田海外留学奨学会 http://www.muratec.jp/ssp/などが金銭的な支援を行なっている.また,修士課程を修了することが目的ならば,伊藤国際教育交流財団http://www.itofound.or.jp/も魅力的である.これらのホームページに掲載されている応募人数をみると,実際に多くの学生が会学の大学院留学を志しているようだ.このように,大学や奨学財団による金銭的援助がうけられることは大学院留学の大きなメリットである.

 

【選べる研究室】

 世界中の研究室を視野に入れることで,研究の選択肢を大幅に広げることができる.研究室を選ぶとき,先輩から勧められたり,論文を読んだり,さまざまな手段を用いて情報を収集しているだろう.その際,日本の研究室だけではなく,海外の研究室も視野に入れてはどうだろうか.筆者は線虫やショウジョウバエを用いた神経変性疾患の研究にたずさわりたいと考えていた.そして,興味のある論文を読む過程で海外の研究室に興味をいだくようになり,留学を考えるようになった.せっかく大学院生として研究者への一歩を踏み出すのなら,自分の興味と合致した魅力的な研究室を選ぶべきではないだろうか.

 

 本稿を読んで大学院留学に魅力を感じるのであれば,ぜひ”理系留学のススメhttp://jun.korenaga.com/にアクセスしてほしい.これは,米国に大学院留学し,現在は Yale 大学で研究室を主宰している是永 淳博士のホームページである.本稿には書ききれなかった大学院留学の多くの魅力や,豊富な体験談にもとづいた留学の”いろはが記されている.

 

 次号では,後編として,大学院留学を心に決め現在にいたるまでの筆者の体験談を記載したい.

 

嶋津直之 (理化学研究所脳科学総合研究センター)

E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org










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