2009/10/29 (木)

キュベット : 200910 学振をとおして研究をかえりみる:後編

 

 先月号にひきつづき,日本学術振興会特別研究員 (学振) DC2審査中の大学院生SさんとTさんにインタビューを行なった.学振の申請書の記入欄は”申請資格等”"現在までの研究状況”"これからの研究計画”"研究業績”の4つのパートに分かれている.さらに,”これからの研究計画”には,研究背景,研究目的・内容,研究の特色・独創的な点,年次計画,の4つの項目がある (http://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_sin.html) .このような申請書をはじめてみる人の多くは,一見して,むずかしそうだと感じるだろう.そこで,2人には,実際に申請書を執筆したときに感じたことについて聞いてみた.

 

【Q】実際に申請書をみたとき,記入欄が膨大であることや,記入事項のほぼすべてを自分で組み立てる必要性があることに驚いたのですが,SさんとTさんはどのように感じましたか?

【S】それぞれの項目の記入欄が膨大である反面,項目のあいだに内容の重複があると感じました.たとえば,申請書には”研究目的・内容”と”研究の特色・独創的な点”とを記す項目が独立に用意されています.自分の研究の重要性をアピールするためには,どちらの項目にも研究目的や研究の特色,独創的な点を盛り込みたいと思いました.内容の重複はさけられませんが,審査員を飽きさせないためにも,項目間の差別化をはかることが”カギ”となると感じました.

【T】自分の場合は,一般的にまだ広まっていないような用語の多い分野の研究を行なっており,むしろ,文字数を減らす工夫が必要だと感じました.スペースが足りず,用語の説明だけでおわりかねないと危惧したからです.

 

【Q】それぞれに違った印象をもたれたようですね.Sさんの場合,項目間の差別化はどのように工夫しましたか?

【S】差別化のまえに,まず,統一化をはかりました.具体的には,審査員が研究の全体像をくり返し俯瞰できるように,それぞれの項目に研究の一連の流れ (目的,内容,特色など) を取り入れました.そのうえで,項目ごとの要求にしたがって詳細に説明するようにしました.

 

【Q】Tさんは,逆に,記入欄が不足しているようでしたが,専門用語をかぎられた文字数で理解してもらうための工夫とは,どのようなものだったのでしょうか?

【T】説明が必要な専門用語の使用をなるべくさけ,使用する言葉を統一し単語数を減らす努力をしました.こうして,自然と読み手にあったやさしい文章になっていきました.

 

【Q】話を聞いて,あらためて申請書作成のたいへんさを実感しました.今後,申請を行なう予定の学生にとって,なにか文章作成のトレーニングとなりえそうなことがありましたら,アドバイスをお願いします.

【S】学会発表の経験が役に立ったと思います.発表要旨を書くことが文章作成のトレーニングになったことにくわえ,異分野の研究者からの質問をとおして,これまでとは違った観点から自分の研究を見直すことができました.

【T】自分の文章を他人にみせてフィードバックをもらうことが有効です.また,この際,なにをいわれても,文章が批判されているのであって,自分が批判されているわけではないという心構えをもつ姿勢を忘れてはならないと思います.こうして文章作成のむずかしさを痛感すると,他人の文章を読むときに自然と書き手の気持ちになって読み,参考にするようになります.また,専門外の人にむけた文章の手本として,『日経サイエンス』の記事を参考にしました.

 

 以上,2号連続で学振についてのインタビューを行なった.本稿が学振への申請を考えることのみならず,日々の研究の意義を考えるきっかけに少しでもなればうれしいかぎりである.また,学振の採用者一覧が閲覧可能である (http://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_saiyoichiran.html) .もし,採用者が近くにいた場合,話を聞きに行ってみてはどうだろうか.

 

清水聡一郎 (東京大学大学院理学系研究科)

E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org










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