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生命は人工合成できるか -ありえた生命の追求による科学とその応用
東京工業大学 木賀大介
ちょうど11年前、当時修士学生であった私は、この生化学若い研究者の会にて、同じタイトルの分科会を、オーガナイズしました。そのときの講師の先生のご講演のサブタイトルは「遺伝子は人工合成できるようだ」「メタバイオティクス研究の展開」です。今回の私の講演のサブタイトルは、「遺伝子回路は人工できるようだ」とすることもできます。
さて、10年前の各先生のアブストラクト冒頭を引用させていただきます。
いわゆる「進化分子工学」と称される分野の研究に携わる人たちが目指しているゴールの1つが、「遺伝子はどのようにして誕生、進化してきたのか?」という問に対する何らかの回答を得ることです。(中略)遺伝子の現在の姿が、ある必要性に対する選びに選び抜かれた超優秀な回答であったのか、あるいは、何か偶然に支配されて今の姿になっているのか...こういった興味に対し、実験室内で遺伝子の誕生・進化をシミュレーションすることによって回答を得ようとしているのが我々のアプローチです。(癌研究会・芝清隆先生)
従来の生命科学の諸分野では、自然界に存在する生物そのものをアナリティカルな方法論で探求してきた。これに対し複雑多岐にわたる生命機能の中から対象とする機能を抽出し、シンセティックに実現してみることによって生命の本質を明らかにしようとする方法論が考えられる。
(現・東大生産研・藤井輝夫先生)
この数年間、「つくる」をキーワードとしたSynthetic Biologyという言葉が誌上を賑わせつつありますが、基本的なスタイルはわが国においても10年前から確立していたといえるでしょう。特に、生物学をバックグラウンドとしていなかった藤井先生が生物分野に参入することで、「つくる」生物学の本質を見抜かれていたことが興味深いことです。
本講演のトピックス
1、10年間における生命科学の進展
この10年間で種々の生物のゲノムが解読されるなど、網羅的解析プロジェクトの進展によって生物の部品がリストアップされてきた。一方、化学合成技術の進展は、DNA断片だけではなく、遺伝子の受託合成業者を成立させ、人工ゲノムの合成までもが具体的な研究テーマになっている。また、タンパク質についても、進化分子工学によってその特性を変化させることが容易になっただけでなく、モノの調製技術が進展してきたことを確認する。
2、「つくる」ことの意義:科学と工学
生命の部品を調達することが容易になったならば、実際に組み合わせて「つくる」研究も進展してくる。作り出されたシステムを活用しよう、という工学的研究が存在することはもちろんであるが、「つくる」ことに科学として2つの意味がある。そのひとつ、「ありえた生命」とは、「遺伝暗号表に記載されている20種類のアミノ酸」など、生命に共通してしまっている基準とはことなるモノである。これと天然の生命を比較することで、初めて比較によって天然の生命の本質をしることができることを紹介したい。
3、細胞内に構築された人工遺伝子回路の紹介
薬剤など有用な化合物を生産する人工遺伝子回路だけでなく、「大腸菌ホタル」「大腸菌写真」など、おもしろみを追求した遺伝子回路も構築されている。さらには、人工遺伝子回路構築の「ロボコン」までもが国際大会として開催されており、日本から参加したチームの活躍を紹介する。
4、試験管内にも人工遺伝子回路が構築できる
システムを構築するならば、天然の細胞に頼らずに1から構築してみたい、という欲求がある。もちろん研究の意義も存在し、それは、細胞と異なり系の内容物が全て判明しているため、モデル化が容易である、ということである。実際にどのような系が構築できているか、私たちの研究を中心に紹介する。
5、人工細胞の構築へ向けた諸課題:技術と社会
今後10年以内には、膜構造を備え、富栄養条件では自律的に増殖できる人工細胞が構築されるであろう。そこにいたる技術的課題を議論したい。さらには、人工細胞や「人工生命」の構築は、社会的な問題を引き起こす可能性があり、「サイエンスアゴラ」などの場で議論されつつある。この問題に対する、研究者としての対応について、皆さんと議論したいと考えている。
本講演を聴いた皆様の中から、さらに10年後に「生命は人工合成できるか –細胞は人工合成できるらしい」というタイトルでお話してくださる方が出てくれば、本発表は成功だった、ということになります。
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