|
科学の思考を現実化する
塩満 典子 先生
(独立行政法人 科学技術振興機構 科学技術振興調整費業務室 室長)
● 略歴
1984年3月 東京大学理学部生物学科卒、4月 科学技術庁入庁
1990年6月 ハーバード大学行政大学院修士課程修了、公共政策学修士
2001年1月~ 文部科学省研究開発局宇宙政策課調査国際室長
2002年5月~ 奈良先端科学技術大学院大学教授
2004年4月~ 内閣府男女共同参画局参事官、調査課長 等
2006年7月~ 日本科学未来館企画総括室調査役
2007年 7月~ お茶の水女子大学教授・学長特別補佐
2009年 7月〜 独立行政法人 科学技術振興機構 科学技術振興調整費業務室 室長
● 科学との関わり方・モットー
科学者が頭の中で考えたこと、なかでも、人々の強い願いと合致したことを「現実化」することをお手伝いすることが、私の仕事です。たとえば、科学者が研究計画を頭の中で描いたとき、研究資金が必要なときには、有用な情報を提供するとともに、新しい研究制度やプログラムが必要なときには、科学技術政策を企画立案・実行することなどをサポートしています。
「科学」は、人々の健康や安全を守る上で重要です。経済面でも、国際競争力の維持・向上のために不可欠です。社会において、科学者として研究を行ったり、技術者として研究成果を活用して暮らしに役立つ技術を開発したり、消費者として技術や製品を活用したりなど、一人ひとりが、様々な形で「科学」と関わります。
「科学」は真理の希求など知的好奇心をそそられるものですが、人類の共通的問題の解決にも重要な役割を果たします。どの「科学」を選択し、科学者や一般社会の人々の思いを実現するべきか。その優先順位づけなどについて、皆様とともに考えていきたいと思います。
● 現在の科学に対して感じていること
科学的な研究対象は、自然科学から人文社会科学に至るまで、広範かつ専門化・細分化され、一歩、自分の専門の外に出ると、その内容は理解し難く、遠い存在になっています。また、科学者は、自身の専門分野内の価値観や人脈には、関心を持ち、敬意を表しますが、「象牙の塔」ができやすく、外の人のことは忘れがちになります。特に、近年、自然科学分野では、新しい発見のための競争も激しいため、科学者は忙しさの中で、幅広い興味や教養を持ちにくくなっていると感じています。こうした中で、どのような「科学者」の夢を実現すべきか。資金や人などのリソースには限りがありますので、「選択と集中」は避けられませんが、資源配分のための事前・中間・事後の「評価」が重要になっていると思っています。
● 研究を評価するときの基準
研究課題の学術的重要性・妥当性、独創性・革新性、波及効果・普遍性、研究計画・方法の妥当性、研究遂行能力・研究環境の適切性に加え、新規事業の創出可能性などが評価の基準と考えられます。科学の専門化・細分化が進む中で、正確かつ公平な評価のための評価者の資質や評価システムが求められます。
● 若手へのメッセージ
世の中には解決を待つ多くの課題があり、新しい社会的価値の創造(イノベーション)が求められています。「科学」は、真理の解明を通じて人類の知的財産を構築するとともに、その客観性・普遍性・洞察性で、共通課題の解決策も効果的・効率的に提示してきました。しかし、歴史を振り返ると、「科学(技術)」は人類社会に負の側面をもたらしたことも事実です。科学者や一般社会は、どのように「科学」と関わるべきか。壁を作らず風通し良く、若手の皆様の鋭い感性に基づく議論で、明るい未来を拓いていくことを期待しています。
|