|
「科学者の使命とは何か:本末転倒の欺瞞に騙されることなかれ」
研究者の本分は言うまでもなく「研究」である。その評価は当然、研究業績によって行われ、それは公正であることが何よりも求められる。しかしながら、この当たり前とも思える前提に、近頃いろいろな不純物が混じりつつある。その多くは国や産業界からの恣意的な関与であり、例えば「情報発信」、「説明責任」、「社会貢献」、「産官学連携」、「学際研究」、「知的財産」等々は、あたかも時代の要請のように信じられている。しかし、その多くは研究の推進という大目的に対して本来無関係か、又は優先度が著しく低く、時には有害なことさえある。例えば「情報発信」をしないと良い科学者にはなれないのか?答えは明らかに「No」である。研究者の本業は研究であって、もし社会貢献を問うならば、何より大切な社会貢献は「素晴らしい研究をすること」であり、いわゆる市民公開講座や高校への出前授業ではない。そのような些事に時間を使う暇があれば、研究に集中すべきなのだが、実情は上記のような雑用が山積して、研究のために使える時間が大幅に減っているのが現状である。時間の問題だけではない。最近は研究者の評価項目に、あたかも研究と同じレベルで教育・国際交流・社会連携・管理運営、等の項目が並んでいる。まるでこれらの雑用をせずに科学に打ち込んでいる研究者は悪だと言わんばかりである。つまり「学(アカデミア)」という純粋な領域にまで、「産(商売)」・「官(権威主義)」の不純な思惑が持ち込まれようとしているのだ。角を矯めれば牛は死ぬ。研究以外のことを科学者に押し付ければ科学がダメになることは自明である。それにも関わらず、これら「情報発信」等々のキーワードが声高に唱えられて、少なからず「学(アカデミア)」まで迎合しているのは、本当に愚かしい限りである。このような本質的でない目的は、それに踊った科学者と共に、必ず時間と共に淘汰されるであろう。若い諸君には、誤った情報や偏った考えに振り回されるのではなく、科学者らしく冷静に何が本質であるかを見抜いて欲しいと私は願う。
|