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「遺伝子に新たな文字を加える研究」
平尾一郎 先生
(理化学研究所ゲノム科学総合研究センター タンパク質制御高分子研究チーム リーダー)
地球上の全ての生物の遺伝情報は、4種類(A,G,C,T)の文字(塩基)からなる配列としてDNA中に蓄えられている。そして、AとT、GとCがそれぞれ塩基対を形成することにより、DNAの二重らせん構造が形成され、さらに、生命のセントラルドグマの反応(複製・転写・翻訳)も、この塩基対形成の仕組みにより成り立っている。従って、A-TとG-Cの塩基対は、生命の基本法則といっても過言ではない。この塩基対の基本法則に基づいたセントラルドグマは、地球上の初期の生命体にすでに備わっていたものと考えられる。それでは、果たして、これらの2種類の塩基対は、生命にとって普遍的なものなのだろうか?それとも、偶然の結果としてこれらの塩基対が用いられるようになったのだろうか?これらの疑問に関連して、最近、人工的に第三の塩基対を作り出し、これをDNA中に組み込むことにより、遺伝情報を拡張しようとする研究が進められている。
さらに、人工塩基対の研究は、進化に関わる知的興味に加えて、従来の遺伝子組換え技術に代わるバイオテクノロジーの創出にもつながる。従来型の遺伝子組換え技術に、人工塩基対をDNA中に組み込むことにより、DNAやRNA中にオーダーメイドの機能性ヌクレオチドを導入することや、また、人工塩基を含む新たな遺伝暗号を用いて人工アミノ酸を導入したタンパク質を作り出すことも可能になる。
人工塩基対の研究は、1989年に米国のBennerらの研究によって始まり、1990年代の中頃より、米国のRomesbergら、Koolら、そして、我々のグループも研究を始め、これらのグループの間で競合的に研究が進められている。その中で、我々のグループは、2002年に転写と翻訳で機能する人工塩基対を、そして、最近では、試験管内の複製であるPCRにも利用できる人工塩基対の開発に成功した。本講演では、この人工塩基対の開発研究の現状とその展望について解説したい。
主な参考文献:
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