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人工万能幹(iPS)細胞の可能性と課題
(Ying and Yang of induced pluripotent stem (iPS) cells)  

ヒトやマウスの初期胚(胚盤胞の内部細胞塊)に由来する胚性幹(ES)細胞はすべての細胞へと分化できる多能性を維持したまま、無限に増殖でき、脊髄損傷、I型糖尿病やパーキンソン病などの変性疾患に対する細胞移植療法の資源として期待されている。核移植技術と組み合わせると、患者自身の遺伝子を持ち、拒絶反応を惹起しないオーダーメードES細胞を樹立できる可能性が有る。韓国のグループがヒトクローン胚からのES細胞樹立に成功し、オーダーメードES細胞への期待が高まった。しかし、同研究は捏造であることが判明し、実際には核移植の高い技術を持つ同グループが、2000個以上のヒト卵子を用いてもクローンES細胞は樹立できなかったことが判明した。またヒト胚や卵子の使用には慎重な運用が求められている。私たちはこれらの問題点を克服するため、患者自身の体細胞から、ES細胞に類似した万能性幹細胞を直接樹立する技術の開発に取り組んでいる。Expressed sequence tag(EST)データベースとマイクロアレー解析により、多能性維持に関与する因子を複数同定した。これらのうち4つの因子(Oct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)をレトロウイルスで導入することによりマウス皮膚細胞からES類似細胞を樹立することに成功し、人工万能(iPS)細胞と命名した1。現在のところ、iPS細胞がヒト体細胞からも樹立できるかは不明であるし、c-Mycやレトロウイルスを利用することから安全面での課題も多い。しかし、これらの課題を克服することができれば、ヒト胚を利用することなく、拒絶反応のない細胞移植療法を実現できる可能性がある。

参考文献

  1. Takahashi, K. & Yamanaka, S. Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell 126, 663-76 (2006).
 
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