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1分子ナノサイエンス ―生命機能とゆらぎ―
2003年は、アトムが誕生した年で話題になりました。手塚治虫の時代には、コンピュータや機械技術が進めばアトムに近いものをつくることが可能だろうと考えられてきました。しかし、それから40年間科学技術は予想以上の大きな進展を遂げてきましたがアトムはできていません。我々が、箸で物をつかんだり、でこぼこ道を走ったり、遠くを歩く人の後ろ姿をみてその人が誰であるかすぐ当てたりといった普段何気なく行っていることが、実は今の技術では非常に難しいのです。世界最大のコンピュータの規模は100万ワットですが、100万分の1ワットで働くショウジョウバエの動きのほんの一部も再現することはできていません。生物と人工機械はまったく異なる巧妙な原理が働いているらしいのです。今の技術をこのまま進めてもアトムはできそうにありません。
生物と人工機械は何がちがうのでしょう?機械は歯車やモーターなどで固くてきっちり動く部品でできています。一方、生物は柔らかいグニャグニャのタンパク質や脂肪、DNAなど生体分子でできています。しかも、その大きさは、数ナノメーター(ナノは10億分の1の単位)しかありません。我々は、レーザ技術を駆使して、これら生体分子1個が働く様子を見る最先端ナノテクノロジーを開発しました。そして、それらの動きを詳しく捉えることに成功しました。驚くことに、生物機械はノイズから逃げるのではなくそれを巧く使って超省エネで働いてことが解かりました。また、ノイズを使うとその動きはあいまいになってしまいますが、この一見ネガティブにみえる性質も、それらがシステムを作ったとき生物特有の柔軟性や融通性に生かしていることもわかってきました。講演では、具体的に分子モータ、細胞の情報伝達、脳の視覚認知などのしくみについてお話します。
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