(蛋白質核酸酵素12月号 Vol.49 (2004)より許可を得て転載)


地方教育現場のこれから

  今回は、国立大学独立行政法人化に伴う地方大学の現状と今後、地方大学若手研究者の
あり方について、読者とともに考える機会としたい。

■そもそも独立法人化とはなにか
 法人化の狙いは、閉鎖的な研究体制、社会との隔絶など、これまで問題とされてきた大
学の体質を払拭するために、「大学経営」のスタイルを民間企業並みの「開かれた経営体
制」に改革し、より強い自律、自由、独立性を与えることだとされている。
 しかし、その実態は旧来の制度と基本的に変わっていない。大学法人は教育・研究・経営
に関して「中期目標」「中期計画」を文部科学省に提出し、それに基づき「評価委員会」
が開かれて、文科相が予算配分や教育・研究・経営計画を指示することになるからだ。
 つまり、これまで以上に文科省の介入も予想されるなかで、自由が拡大するとは思えな
い。同時に、外部委員を交えた審査では評価されにくい地味な研究、長期にわたる基礎研
究などが敬遠され、学部や地域格差が広がることも懸念されている。

■地方大学の現状
 法人化が施行されたことにより、地方大学は学生の確保に必死である。最近では大学の
個性を前面にアピールした学生募集のポスターも珍しくない。さらには大学院大学を新設
し、学外からの入学者受け入れ枠の拡大を図る。だが、当初の外部生獲得という狙いとは
逆に、同時期に設立された中央の大学院大学に内部生が流出している。やはり、地方大学
は中央の大学に劣っているととらえられた結果なのだろうか。
 筆者は決してそうは思っていない。それは、若手研究者の大学選択基準のひとつである
「研究テーマ」に関しては、地方大学は研究室も少なく研究内容の多様性に乏しいが、
個々のテーマには独創性にすぐれたものも多い。また、研究室の学生の進路・就職の責任
を最後までもつ人情豊かなボスが多いのも利点ではないだろうか。しかし、大学の知名度、
研究費の総額に関していえば地方大学の見劣りは否めない。

■文部科学省への提言
 中央と地方との格差を生み出す要因に「国の評価基準」があげられる。国は大学研究者
個人の力を評価するというより、むしろ組織力を評価する傾向が強い。そのため、組織力
に劣る地方大学にネガティブフィードバックがかかるというメカニズムが依然として存在
する。こうした背景が、地方大学の若手研究者を中央の大学へと向かわせ、研究教育現場
の一点集中化を加速させる。
 しかし、研究現場の一点集中化は独創的な研究の場を失うことでもある。それよりはむ
しろ、競争による研究体制の活性化など法人化を機に得られる利点を生かし、中央と地方
が共存し教育の裾野を広げることが、独創的な研究を生むのに重要なのではないだろうか。
地方大学の秘めた可能性を見極める先見的な評価体制を確立し、資金や環境の整備が行わ
れるべきだと考える。

■地方若手研究者へのメッセージ
 いま、各大学では教育・研究・経営を一手に担う有能な学長の存在が必要とされ、これ
まで以上に学長のリーダーシップの強化と意思決定の迅速化が進んでいる。また、各大学
において地域との連携強化、社会的ニーズへの接近などの地域独自の改革がなされている。
一方で今後は、若手の多方面における活躍が大学にボトムアップ式の押し上げをもたらす
ことが期待される。それには、学業成果は重要な要素ではあるが、若手研究者も大学の創
り手であるという自覚を持つことも重要となる。
 そのさきがけとして、若手研究者が大学側に運営方針に関する具体的な意見や考えを提
言できる新しいシステムが大阪大学において、学長と学生の意見交流会という形でスター
トしている。これに対し、地方大学では他大学とのネットワークづくりを行いたい。たと
えば、将来の地方大学のあり方について近隣大学と意見交換できる場を設けることは、若
手研究者の大学運営に対する意欲を駆り立てる意味でも重要なことだと考えている。
 ともあれ、若手研究者おのおのが大学の将来を担う一大学人であることを理解し、大学
発展に取り組んでほしい。

木村元思(鳥取大院医)
E-mail:motoshi@@grape.med.tottori-u.ac.jp