(蛋白質核酸酵素1月号 Vol.50 (2005)より許可を得て転載)


博士の就職難は本当に問題なのか?(2)  
―就職活動をしてみよう!― 


今回は、民間企業への就職活動でのポイントについて述べます。

1.新卒採用市場と中途採用市場
 人材市場は大別するとこの2つに分けられます。新卒採用市場は、リクナビ・日経就職
ナビなど新卒者向け求人広告サイトを利用して行うものと、学科や教授の推薦で就職する
学校推薦という制度があります。後者は工学系専攻では一般的です。新卒採用市場ではど
ちらかというと、専門性よりも入社後の伸びしろが重要視されます。
 中途採用市場はこの数年のあいだに急激に一般的になりつつあります。変化の激しい時
代にあって内部で人材を育てるゆとりがなくなりつつある企業は、必要な能力を持った人
材を外部に求めるようになっています。こちらでは、入社してからの伸びしろはもちろん
ですが、即戦力になれるかどうか、「職務履歴」がとても重要になります。
 就職に機会は、以前のように知り合いや教授・大学の伝手に頼る閉鎖的なものではなく、
よりオープンなものとなってきました。そのなかで博士の就職は、新卒採用に応じる場合
も「中途採用」の扱いに近いものになっているように感じられます。

2.研究概要と履歴書の準備
 博士にとって「職務履歴」に相当するものは、大学院生・ポスドク・オーバードクター
として行ってきた研究の履歴です。求人に応募する場合、研究職であれば職務履歴に相当
する書類として、研究概要と履歴書の提出を求められます。研究概要・履歴書はいったい
どのように書けばよいのか、そのポイントを示します。

 研究概要:研究概要は「研究の意義と目的」「実験・解析と結果」「考察」で構成され
ます。ここでは、自身の研究能力の高さを示さねばなりません。研究能力としては「課題
設定能力」と「研究遂行能力」の2つがあります。
 「課題設定能力」は、自身の研究について、研究分野の中でどのような位置づけにあり、
どのような意義があることなのかを説明するとともに、研究のめざす方向が実験・解析と
どのように論理的につながっているかを示すことで明らかになります。「研究の意義と目
的」とのつながりも大切になります。また、得られた結果から、今度はどのような方向に
つなげていくのかといった「考察」も大切なポイントになります。
 「研究遂行能力」は、「実験・解析」のところで示されます。研究でぶつかった壁、そ
して、その壁をどのように乗り越えたのか、学会発表ではさらっとふれて終わるようなと
ころに重点をおいて書いてください。また、研究を通してどのようなスキルを身につけた
のかを記しておくと効果的かもしれません。また、いうまでもないことですが、どんな分
野の研究者なのかを示すため、研究内容をよく表した「タイトル」をつけることも大切で
す。


 履歴書:履歴書は面接官とのコミュニケーションのための道具と考えてください。そこ
にある項目のすべてが会話のきっかけになり、応募者の人となりを知る手がかりとなりま
す。たとえば、趣味に読書と書けば、「どんな本がすきなのか?」「その本を読んでどう
思ったか?」というように会話が広がっていきます。また、もちろん自己PRは大切であり、
たとえば、「忍耐強い」「理詰めで考えることができる」といったキーワードを並べるだ
けでなく、なにかそのキーワードをあらわすようなエピソードを示すと親切です。さまざ
まな自己分析の良書が出版されていますので、参考にしてみてください。

3.民間企業に就職するにあたって
 民間就職における研究の本質は、「真理の追究」ではありません。そのベースにあるの
は、研究の成果として得られた商品なりサービスを通し、いかに社会に貢献するかという
ことです。自分が研究を通じどのように社会の役に立てるか、その気持ちをもってもらえ
たらと思います。

 隔月連載3回目の次号(3月号)は、大学院における指導上の問題、博士の求人市場の
創造についての考えを述べる予定です。
 

奥井隆雄 (「博士の生き方」運営) 
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