(蛋白質核酸酵素5月号 Vol.50 (2005)より許可を得て転載)


博士の就職難は本当に問題なのか?(4)  
――読者の質問にお答えします


 最終回の今回は、博士課程修了ののち企業に就職することに興味をもつ生物系の学生3
名に、今回の連載を読んだうえで質問を出してもらい、それに答えるという形にしました。
 この10年のあいだの博士課程をとりまく変化をみてみると、以前は、大学教員の年間採
用者数6,000人程度に対し博士課程修了者は年間6,000人を少しこえる程度であったのが、
現在では、大学教員の採用数はほとんど変わらないのにもかかわらず、博士課程修了者は
2倍に膨らんでいます。これは、将来にわたり確実に大学教員になれない博士が多数生み
出されることを意味します。また、ポスドクというポストは一般的になりましたが、毎年
のように大勢のポスドクを使い捨てにするような研究機関もあるようです。
 このような逆境のなかで生きていくために、筆者は企業への就職をひとつの有望な選択
肢として提示してきました。今回は、寄せられた質問の中からとくに多かった、企業で働
くことや企業への就職活動にまつわる不安についての質問に答えていきます。


質問 企業の研究所は大学・国立研究所とどう違うのか。また、最近は、研究職で学生を
とっても研究職以外の分野にまわしてしまう企業もあると聞くが、実際はどうなのか。

回答 企業の研究所は、近い将来にお金になるという見込みのある研究テーマを選んで研
究を行う点が、大学や国立研究所とは違うところです。また、技術系の場合は、新卒でい
きなり営業にまわされるということはないと思います。最先端の分野の場合は、買うほう
も売るほうも、実際に研究にたずさわっている者どうしで話しをしたほうが理解が早いと
いう理由で、営業職にまわされるというよりは、研究職でありながら営業もするという形
が一般的なようです。たとえば、青色発光ダイオードの発明で有名な中村修二氏も、自身
で開発した製品を売るため徳島市内の飲み屋で接待をすることもあったと書いています。
企業にいく以上、なんらかの形で営業にかかわるということは避けては通れないと思いま
す。


 これまで隔月で4回にわたって連載を行ってきました。一昔前であれば、博士課程→大
学教員・公的研究機関研究員という流れはほぼ保障されたものだったので、流れに身を任
せて安心して研究に没頭することができました。しかし、現在はそのような保障のない時
代であり、自分自身でしっかりと将来の目標を定めて、そのためにいま何をするべきか考
えないといけない状況になってきています。筆者は、今後もホームページ「博士の生き
方」(http://hakasenoikikata.com/)にて、進路を考えるうえで役に立つ情報の提供や、
さまざまな機関と協力してのイベント企画を行っていくことで、大学院生・ポスドクのキ
ャリア形成の役に立っていきたいと考えています。


奥井隆雄 (「博士の生き方」運営) 
E-mail:webmaster@@hakasenoikikata.com

注:Web掲載にあたり、誌面の内容を一部変更しています。(キュベット編集部)