(蛋白質核酸酵素Vol.51 No.8(2006年7月号)より許可を得て転載)


全国規模の“若い頭脳のネットワークの形成”を目指して
〜生化学若い研究者の会「夏の学校」の試み〜


 日々研究室にこもって研究を続けていると、自分の研究分野にはくわしくなれますが、
ほかの分野の話になるとくわしい内容についてはなかなか知らないことが多くなってしま
います。実際、科学技術が進歩するにしたがって生命科学も進歩し、研究分野はますます
細分化され、報告される論文の数も増えています。このような現状のなかで、論文で報告
されるさまざまな分野の最近の情報を一人で逐次把握していくとなると、膨大な時間が必
要となり、実際にそれを実行するのはむずかしいのではないかと感じられます。それでは、
どうすれば生命科学の研究者は自分の専門分野以外の知識を効率よく得ることができるの
でしょうか?
 たとえば筆者自身の場合、「バイオインフォマティクス」という研究分野を最初はまっ
たく別世界の人が研究している分野というような見方をしていました。しかし、実際にそ
の分野で研究をしている知人からその価値や方法についてくわしく教えてもらうと、自分
の研究分野にも有用であることがわかり、一気に世界が広がった気がしました。このよう
に、知らない学問分野に出会ったとき、実際にその分野を専攻している知人がいると非常
に知識を得やすいと思います。素直に教えてもらえるし、気軽に質問もできます。また、
その分野が身近に感じられるようになることが非常に貴重です。そのうえ、狭い研究分野
にばかり閉じこもりがちな研究者の知識の枠を広げ、研究するうえでブレークスルーを生
み出しやすくなるのではないでしょうか。したがって、もっと研究者間でつながりを持っ
て情報の共有ができれば、生命科学の幅広い理解の実現が容易に可能になると思います。
 生化学若い研究者の会は、「若い頭脳のネットワークの形成」をスローガンに、研究者
が知識の共有をはかり、分野をこえて生命科学を幅広く理解することを目的として、セミ
ナーや勉強会・交流会などを開催し活動を続けている大学院生を中心とした団体です。そ
の生化学若い研究者の会の年に一度の一大イベントが「夏の学校」であり、研究者を目指
す大学院生をはじめ、学部生、ポスドク、企業の研究員まで、全国各地から毎年100人
以上が参加しています。「夏の学校」では研究者間のネットワークを促進するために参加
者が互いの研究内容を紹介しあう研究交流会を開催するほか、夜には参加者全員が集う懇
親会も充実させており、互いに語り合い、ディスカッションすることで交流を深められる
よう企画しています。また、合宿という形式をとることによって、単なる顔見知りという
レベルでは終わらない研究仲間を作ることを目指しています。
 そんな「夏の学校」を,今年(*)は8月18日(金)〜20日 (日)の3日間、東京大学本郷キ
ャンパスにて開催します。生命科学のさまざまな分野で研究をされている先生方を講師と
してお招きし、その分野の基礎から最先端までの研究を話していただくワークショップも
用意しています。最新の情報や詳細については,生化学若い研究者の会のホームページ
http://www.seikawakate.org)をご覧ください.あなたもこの機会に全国規模の若い研
究者のネットワークを構築し,科学の視野を広げてみませんか?
 

村田貴朗(生化学若い研究者の会 第46回夏の学校実行委員長)
E-mail:tmurata@@pri.kyoto-u.ac.jp

(*)2006年現在の予定です。(キュベット編集部注)