蛋白質核酸酵素 Vol.52 No.3(2007)295より許可を得て転載


研究者がブログを書く意義と効能 ―準備篇―

 簡便に自己表現できることから,ブログを書く人が急増しつつある.研究に携わってい
る人が書いているブログも多く,現在では,学生から大御所クラスの大学教授まで,老若
男女を問わずさまざまな立場の人が日々考えていることをWeb上で日にすることができ
る.筆者がブログというものを認識するようになったのは,Gardener's Diary
http://www.sgtpepper.net/garden/diary/)を知ったときからであると思う.そこでは,
筆者が興味をもつ分野の論文がわかりやすく解説されており,大きな感銘を受けた.自分
も同じようなことをしてみたいと思い,2005年7月から"とある昆虫研究者のメモ"
http://ghop.exblog.jp/)というブログを書きはじめた.このブログの根幹を成してい
るのは,筆者が読んで面白いと思った論文の簡単な内容紹介と感想である.筆者は昆虫を
材料に研究を行なっており,紹介する論文は昆虫に関するものが主である.きわめて偏っ
た内容であるにもかかわらず,当初は考えていなかったような多くのアクセスと意外な反
響をいただいている.これから2回にわたって,ブログ継続のコツ,1年を経過したいま考
えていることなどを述べたい.今回は,準備編として,話題のみつけ方と継続のコツにつ
いて述べる.

■話題のみつけ方
 研究者が書くブログの内容はさまざまであるが,日常生活や考えたことを同業者あるい
は一般の人に伝える,日記風のスタイルが一般的である.筆者の場合,上述したようにお
手本となるブログが存在したし,面白い話題を連続的に提供する自信がなかったので,最
初は1日に1本の論文紹介というスタイルをとった(平日のみ).慣れるまでは四苦八苦し
たがすぐに慣れ,頻繁な更新を継続したことでアクセス数は急上昇した(その後,更新が
滞るとアクセス数は停滞したが,それほど減りはしなかった).筆者は,自分が興味をも
ちそうな論文については,PubMedのRSS機能を利用し複数のキーワードを設定し
ておいて,情報がすぐに入るようにしている.論文のタイトルに日を通し,興味をひいた
ものは読んでみて,面白ければブログで紹介するようにしている.母国語である日本語で
記述するという作業によって内容への理解がよりいっそう深まるし,異なる分野の研究者
あるいは一般の人が自分の研究分野に興味をもってくれるきっかけにもなる.読んだ論文
をブログ上で紹介するというスタイルは,多くの研究者にぜひお勧めしたい.

■継続するコツ
 あまり間を空けずに書き続けることが継続のコツだと思う.コメントやメールなどで意
見をいただくと嬉しいものだが,まれな更新ではそのようなフィードバックの頻度も下が
ってしまう.1カ月更新が滞っているブログの約半数は2度と更新されない,というデータ
もある.とはいっても,諸事情で更新を休まざるをえなくなることもあるだろう.そう簡
単には読者が減らなくなるような時期まで頑張って頻繁に更新し,それ以後は気楽に構え
るのが継続のコツだと思う.
 筆者の場合,ブログ上では実名を公表していないものの,調べればすぐにわかるように
なっている.筆者のような弱い匿名性でもってブログを書いている研究者は多い.同業者
にはその人が誰なのか簡単にわかる程度の匿名性にすると,そのブログにはある種の魅力
が生じると思う.研究者にとっても,ブログは自己表現の場としての機能を有している.
筆者は,ブログを通して複数の執筆依頼を含むさまざまなフィードバックを受けた.そう
いったフィードバックがブログを継続する最大の原動力となっているが,完全に自らの存
在を秘匿していてはそのようなフィードバックは受けられない.自己表現,宣伝の場とし
てブログを活用することが,ブログの魅力を増し,その継続にもつながると思う.

 次回は,"実践編"として,実際にブログをはじめてみて気づいた点,フィードバックの
具体例を紹介する予定です.


岩田健一(農業生物資源研究所)
E−mail:g-hop@@mail.goo.ne.jp