「in vivoイメージングで生体内のダイナミクスが見える!(仮)」
落谷孝広先生(国立がんセンター)
オーガナイザー:沖本優子(みずほ証券株式会社)
生体内での細胞や物質の挙動を生きたままの状態で観察するというin vivoイメージングの手法によって、今まで調べようもなかったことがわかるようになり、新しい見地が広がりました。
このワークショップでは感動的な画像を先生方が披露してくださいます。必見です!
| 講師要旨 【末松 誠】 慶應義塾大学医学部 医化学教室 Gas Biology: ガス分子による生体制御の生物学とバイオイメージング ガス状メディエータは生体内で生成される低分子で細胞膜を他の物質に比べて容易に通過して蛋白質をはじめとする生体高分子の「隙間」に入り込み、部位特異的に結合してその機能を調節するさよう特徴を持つ分子群である。このような分子群の代表として分子状酸素があるが、この濃度変化を感知するHypoxia inducible factorのconditional knock-out動物の解析から、血球が血管内から血管外に遊走した際に起こる機能のリモデリングに局所の酸素濃度変化が重要な役割を果たすことが明らかになった。 また我々の教室ではheme oxygenase (HO)から生成される一酸化炭素(CO)が肝臓の類洞血管を恒常的に弛緩させ、この臓器に低い血管抵抗を保障することで血流維持作用をもたらすことを示し、内因性のCOが血管機能制御に関与する最初の証明を提示した。 これを契機として生体内でのCOがNOと類似の血管拡張物質であることを示唆する報告が多数提示されたが、我々の知る限り両者は全く異なるガスメディエータであることをいくつかの実験から証明してきた。 まず、抵抗血管の平滑筋細胞にHO-1を高発現させるとCOを介したNO依存性血管拡張反応の減弱により、全身血圧が増加すること、あるいはヘム蛋白であるSoluble guanylate cyclase(sGC)の活性化を感知する単クローン抗体を用いた免疫組織学的解析から、COの増加がNOによる細胞内sGC活性化を阻害することを示し、COの生物作用は局所のNOのレベルによって2面性を以って現れることを明らかにした。 また最近ストレス誘導性HO-1由来のCOにより、methionineからcysteineを生成するrate-limiting heme enzymeであるcystathionine beta synthaseが阻害され、肝臓のthiol代謝のremodelingが起こることが明らかになった。 さらに代表的なヘム蛋白であるhemoglobinは赤血球において酸素運搬体としてだけでなく、局所の酸素濃度を感知しながら各種の代謝物を活発に出し入れするメタボリックシンクとして作用し、COはその作用を阻害, NOは活性化することが明らかになった。 これら3つの現象はともにCOがヘムに結合すると6配位、NOが結合すると5配位をとるという根本的な違いからくる構造蛋白のコンフォメーション変化の違いによるものである。またcystathionine beta synthaseのCOによる阻害は第3のガスメディエータである硫化水素の阻害を起こし、胆汁のquality controlももたらすことがあわせ明らかになった。講演ではGas Biologyから見た新しい臓器機能制御機構の知見を紹介し、bioimaging技術が果たした役割について触れたい。 |
| 講師要旨 【落谷孝広】 国立がんセンター研究所・がん転移研究室 生体内での細胞の動きをリアルタイムに視覚化する: in vivoイメージングのがん研究への応用 現在、様々な蛍光試薬の出現とともに一気に生物学研究に広まった蛍光のリアルタイムイメージングが、いわゆる"バイオイメージング"である。この技術は細胞の分化、運動、分裂などの様々な生物学的活動に伴って生ずる細胞間、あるいは細胞内のシグナル伝達のダイナミズムを直接に可視化するための優れた方法であり、ポストゲノムの掲げるプロテオーム解析の流れと相まって日に日にその重要性を増している。 このような研究背景から生まれたのが、動物個体レベルで生体内の特定の細胞の動態を可視化しようとする動きであり、これが本講演の主題であるin vivoイメージングである。 それではどうやって動物の体内の特定の細胞をイメージングするのだろう。その主役は生体透過性に富むルミネッセンス(ルシフェラーゼ)とフルオレッセンス(GFPなどの蛍光)のバイオフォトニクスだ。 動物の皮膚を透過してでてくる微量なフォトニクスを高感度のCCDカメラによって捕捉した後、ソフトウェアによってそのデータを数値化し、リアルタイムの画像データとして提示する。映し出された画像は、実際のマウスの躰とオーバーラップするため、解析する者には生体内の細胞の集団が可視化されたリアルなイメージとして訴えかける。しかもこの一連の作業は従来のように動物を屠殺することなく短時間で完了するため、継日的な体内の細胞の変化を同じ動物個体を使って追跡することが可能であり、そのデータがより強い説得力を持つのは当然だろう。 動物の体内に移植したがん細胞の運命をたどるには、従来の方法ではたくさんの数の動物を用意し、がん細胞を移植した後、日を追って動物を屠殺し、体内の臓器に出来た腫瘍を直接観察するほかなかった。 さらに腫瘍の出来かたにはばらつきがあり、遺伝子治療用ベクターや抗癌剤の効果を判定する場合も、統計的に有意な実験結果を出すためには、おびただしい数の動物が犠牲になった。 しかし今日登場したin vivoバイオイメージング機器は動物を生かしたまま体内に移植された細胞の様子をリアルタイムに観察することを可能にし、その迅速性、簡便性、汎用性はがん研究のみならず生物学全般にわたる動物実験のデザインそのものを急速に変化させつつある。 トレーサーを工夫することによって、究極のin vivoイメージングといえる細胞1個の動きを生体内でとらえることも夢ではないかもしれない。 |
| 落谷孝広先生 プロフィール |
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| 末松誠先生 プロフィール |
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