科学コミュニケーションの今


菅原剛彦さん(日本科学未来館 科学技術スペシャリスト)
長神風二さん(日本科学未来館 科学技術スペシャリスト)
丸 幸弘さん((有)リバネス代表取締役)

22日9:00〜

オーガナイザー:芝谷尚紀(大阪大学大学院生命機能研究科幹細胞システム研究室M2)
佐藤みず穂(京都大学大学院生命科学研究科高次生体統御学講座M2)

 最近注目を集めつつある「科学コミュニケーション」を、実体験をまじえて講師に語っていただきながら、参加者からもどんどん質問を出していく、そんなワークショップを企画します!

科学を社会にどう伝えていくのか、その取り組みが「科学コミュニケーション」です。
科学コミュニケーションでは、展示企画からの取り組みや市民との直接対話、科学記事などさまざまな形がありますが、実際の裏舞台を知る機会はなかなかありません。我々も、科学に携わる者として決して無関心ではいられませんし、中には自分も積極的に関わっていきたい、と思う人もいらっしゃるでしょう。
そこでこのワークショップでは、科学を社会に伝えていく取り組みをされている講師をお呼びして、実際の現場の話から理念まで自由にお話いただき、また活発な質疑応答を通して我々の疑問や意見をぶつけて活発な意見交換をしたいと思います。

研究者を目指す人から科学コミュニケーターをライフワークにしたい人まで、社会の中における科学について考えてみませんか。

たくさんの参加をおまちしております!!



講師要旨 【菅原剛彦】【長神風二】
日本科学未来館 科学技術スペシャリスト

「科学コミュニケーション」というフロンティア

ひょんなきっかけから、研究の現場から日本科学未来館という科学と社会の接点へ踏み込んだことにより、自分でも今まで知らなかった大変重要な世界があることがわかりました。その「科学コミュニケーション」という世界はまだまだ未熟で、大いなるフロンティアです。そこで活動することは、研究の現場の最前線で真理を探究するのと同じくらい重要で、多くの方々の協力を得ながら開拓していかねばなりません。ここでは、私どもの日々の活動の様子を紹介し、いくつかの問題点を指摘しながら、間近な距離で皆様と一緒に考えていければと思います。

 


講師要旨 【丸 幸弘】
(有)リバネス代表取締役

「バイオと社会を結び付けるバイオコミュニケーションの必要性」

 現在の義務教育・高等教育において、「理科離れ」という現象が社会問題として騒がれている現状があります。理科離れ、すなわち将来の科学者の減少傾向は、知財立国日本としては由々しき問題です。また、近年飛躍的に発達しているバイオテクノロジー(以下BT)に対して、社会全般、特に、一般消費者の理解が遅れていることが挙げられます。遺伝子組換えやクローン羊、ヒトゲノム計画など、バイオ分野に関するさまざまな言葉が世の中に氾濫していますが、誤解を招くような表現も多く、消費者の多くはこれらの言葉に不安を感じているのが現状です。
 こうした不安を解消するようなPublic Acceptance(以下PA)活動は、欧米や他の先進国にくらべると、日本は非常に遅れており、いまだ試行錯誤の状態でしょう。バイオ分野においてPA活動の最大の難点は、このPA活動自体を行う人材が不足していることであると考えています。
 1995年の総理府(現内閣府)の調査によれば、BTを含む科学技術全般に関して、「科学技術の知識は日常生活においても大切」であり、「分かりやすく説明してもらえれば理解できる」と思うが、「そういう説明を提供してくれるところはあまりない」と考えている市民が60%を上回る、という調査結果が出ています。さらに1998年の調査では、科学技術に関して「科学者や技術者の話を聞いてみたい」と回答した市民は57%を上回っています。しかし、一方で「聞きたくない」と答えた市民は41%もおり、その理由として、53%が「専門的すぎて分からない」と答え、38%が「関心がない・身近に感じない」と答えています。このように前向きに科学技術の知識をほしがる市民が存在しているが、提供する側の提供機会が少ないこと、また、テクノロジーを分かりやすい言葉で説明する能力が、科学者に不足していること等が問題となっているようです。
 そこでリバネスでは、バイオに特化したPA活動全般を「Bio Communication(以下BC)」と位置付け、設立以来、大学院生等の若手の研究者に「バイオを分かりやすい言葉で説明する能力」等の各種トレーニングを行い、そのトレーニングを積んだ研究者を小・中・高の各学校や一般の市民団体などに派遣して、それぞれの専門分野に関する講演会やバイオの実験教室を数多く開催しています。まさに研究者から発信する"BTの市民理解"を促す活動です。「バイオを分かりやすい言葉で説明し、相互のコミュニケーションにより理解を促す能力」を我々はバイオコミュニケーションスキルと呼び、その研修を受けた研究者をバイオコミュニケーターとし、積極的に市民と研究者が科学について話すことのできるシステムを構築しているのです。この試みは、教壇に立つ講師が研究現場にいるという利点を生かし、大学生未満の学生を対象にバイオの「今」を興味深く伝え、また、研究すること、探求することの意味を伝えることで、子どもたちに「身近なふしぎを興味に変える」ようなきっかけを持つことができる場を提供できるのです。

 このように、理科教育の問題、科学者と一般社会の知識・認知度格差が生む問題を解決するためには、現在第一線の研究を行っている人が立ち上がるべきではないかと考えています。「次世代へきっかけを与える」ことができる研究者が増えることで、このような正の循環系を生み出し、真の科学技術立国につながるのではないかと考えています。


 

 

菅原剛彦さん プロフィール

1 メールアドレス
菅原剛彦 (t-sugawara@miraikan.jst.go.jp)
連絡先:〒135-0064 東京都江東区青海2−41 
日本科学未来館 企画開発室 展示企画グループ

2 研究室/勤務先等ホームページ
日本科学未来館 
日本科学未来館HP (http://www.miraikan.jst.go.jp/)
独立行政法人 科学技術振興機構 (http://www.jst.go.jp/)

3 略歴
昭和46年 神奈川県生まれ
平成6年 麻布大学 遺伝子生物学研究室 卒
平成8年 筑波大学大学院 バイオシステム研究科修了 学術修士
平成12年 筑波大学大学院 医学研究科修了 医学博士
平成12−13年 学術振興会特別研究員
平成13年 日本科学未来館 ボランティア
平成14年 日本科学未来館 科学技術スペシャリスト
現在に至る。
ちなみに研究室歴
麻布大学遺伝子生物学松田基夫研究室、
筑波大学生物系山根國男研究室、
癌研究会癌研究所生化学部中村祐輔研究室、
放射線総合医学研究所第2研究G今井高志グループ、
筑波大学基礎医学系中内啓光研究室、
筑波大学先端学際領域研究(TARA)センター高濱グループ、
徳島大学ゲノム機能研究センター高濱洋介研究室  
ドイツフライブルグ大学発生学研究室清木誠グループ
以上研究室にてゲノム・免疫・発生分化の研究従事経験あり


4 研究テーマ/仕事内容と抱負
「科学をいかに伝えるか」をテーマにさまざまな活動を仕事としています。具体的には、生命科学に関わる展示や講演会・イベントの開発・実施、実験教室のプログラム開発等を中心に、調査や取材・発表など多岐に渡ります。この職種をカテゴライズするのは難しく、科学技術スペシャリストの仕事内容を説明するにも苦労します。とはいえ、研究現場をよく知る人間として、どうすれば研究現場と一般社会の橋渡し的な役割が担えるか、また、若い次の世代に科学のおもしろさを引き出し伝えるか、といったことを主眼に活動を展開しています。"日本の科学と日本のこれからをあるべき姿に導くぞ!"といった少々大きな抱負を掲げておきます。

活動例
(読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/kikaku/011/77.htm
(秀潤社 細胞工学)http://www.shujunsha.co.jp/journal/saibo/bn/s2003_05.html
(数研 サイエンスネット)http://www.chart.co.jp/subject/rika/sc_net/14/sc14_5.pdf
(岩波 科学)http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo200307.html
(JSTニュース)http://www.jst.go.jp/pr/jst-news/2003/2003-09/200309.pdf
(JAMSTEC ブルーアースシンポジウム)http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/EVENT/blue_earth/program.html
(SSH 講義)
http://www.takasaki.ed.jp/ssh/ss14.htm


5 趣味
愛車は三菱ランサーエボリューション、今年はWRC初の日本開催です。高校野球・サッカーで母校の応援にもよく行きます。映画も月3本ぐらいは観ているでしょうか。最近は、仕事柄なのか製作の裏側ばかり勘ぐってしまいます。企画展・科学館めぐりも仕事と趣味の両立かねてよく行きます。皆さんも科学館・博物館・シンポジウム等に足を運んで下さい。

6 ご自身の院生、ポスドク時代について(若手へのメッセージも)
細胞と動物を世話し、日に複数の実験をこなす研究生活で毎日一生懸命でした。今思うと、そういう時期には一つの真理を探究するため"趣味は仕事"とそればかり考え集中すること(大事なことです)が思考の中心となり、競馬の馬のブリンカー(広い視野を遮る馬具)をつけて走っていくのと同じように周囲を見落としがちになります。また、研究のほとんどが国民の税金によってできることを考えると、政治家の説明責任を問うよりも、まずは自分の研究をご家族や周りのおばちゃんにもわかるように周囲を見ながらきちんと説明することから始めてみて下さい。


7 研究者になるために必要なものは?
見た物を不思議なものとして、何?何故?どうして?と素直に感じる心と、知りたい、確かめたいという探求心が根本に必要なもの。その上で、すぐれた研究者となるためには、プレゼンの能力だったり、データを読み取る力だったり、物事を客観的に結びつけたり離したりして様々な角度から検討できることや、語学力や直感力、体力も必要だと思います。脂ののった研究者にはバイタリティーあふれる魅力があります。科学コミュニケーションというのは自分の興味本位だけでなく、人と人のことですから相手を思いやる気持ちがまず先にきて、相手にわかっていただくにはどうすればいいかを常に創意工夫することが必要ではないでしょうか。私のキーワードは「自分がワクワクした世界をみんなで共有したい!」です。

 

 

長神風二さん プロフィール

1, メールアドレス
f-nagami@miraikan.jst.go.jp

2,研究室/勤務先等ホームページ
日本科学未来館HP (http://www.miraikan.jst.go.jp/)

3, 略歴
東京大学教養学部基礎科学科 卒
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系博士後期過程満期退学。
2002年6月より現職。

4,研究テーマ/仕事内容と抱負
仕事内容: 生命科学のコミュニケーション、机上でなく実践として。
抱負: 研究広報でも、知識伝達でもない形で、科学と社会に対して建設的な成果を
挙げたい。

5 趣味
かつては放浪、今は子育て

6 ご自身の院生、ポスドク時代について(若手へのメッセージも)
当時、自分が既に、実験よりも実験する人間に、個別の研究よりも研究そのものが持
つ意味の方に、より強い興味を持っていたことが、研究現場を離れてみて分かった。
見えていないものを見るためには自分自身を常に意識的に遠くへ放り出すことが必
要。

7 研究者になるために必要なものは?
必要なものは、ある種の残酷さ
失っていけないものは、その残酷さを否定し続ける志

 

丸 幸弘さん プロフィール

1)メールアドレス
  maru@leaveanest.com

2)研究室のwebページ(リバネスのHP)
  http://www.leaveanest.com

3)略歴
1978年 神奈川県横浜市生まれ。
1996年 千葉市立千葉高等学校卒業
2001年  東京薬科大学生命科学部 環境生命科学科卒業
2001年 理工系学生の全国学生ネットワークBLS(学生ビジネス研究会)を設立 
2002年  日本で初めてのバイオ教育の会社、有限会社リバネスを設立
2002年 知的財産マネジメント研究会、知識流動システム分科会オーガナイザー
2003年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 農学国際専攻修士課程卒業。
2004年 東京大学大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命工学専攻博士課程2年在学

4)研究テーマと抱負
  (丸さんの{リバネスの}テーマと抱負ということになると思います)
教育改革とバイオテクノロジーの普及。

5)趣味
  旅、釣り、バスケットボール、水泳

6)社長になる前を振り返って
 大学時代はバンドに明け暮れる。大学4年の時、研究室に所属してから研究に興味をもち、研究者を志す。修士1年になってバイオベンチャーにも興味を持ち、研究のかたわら、たくさんのバイオベンチャーの社長に会いに行く。それがきっかけとなり、日本で始めてのバイオ教育の会社を立ち上げた。現在は研究者と社長の二足のわらじを履く。

7)起業家になるために必要なものとは?
 できることは全部やる。行動を起こせば、世の中は変わる。
自分からアクションを起こせば、世の中は変わるんだと信じる。
そして文句を言わない。好き放題やって、楽しく生きる。


 

 

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