内分泌かく乱物質のin vitro Bioassay 分科会

〜ホルモン作用を乱す悪者を捜し出せ!〜

講師
西原 力 教授(大阪大学大学院薬学研究科 生命情報環境科学専攻 微生物 動態学分野)


現在、世界中で内分泌かく乱物質(環境ホルモン)が大きな問題となっていることはみなさんもご存じのことだと思います。内分泌かく乱物質とは私達人間や野生生物の内分泌作用を攪乱し、生殖機能阻害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性のある物質のことを指し、正常なホルモンの作用を乱すこの物質は、世代を越えて深刻な影響をもたらす悪者なのです。医薬品や様々な環境中の物質が、内分泌かく乱作用を持つことはいろいろな事例から示唆されており、我々の周りにもこのような物質があふれているのです。

この内分泌かく乱物質という大問題に対して我々が先ずしなければいけないことはいったい何だろうか? それはどのような物質が内分泌を攪乱し、どのような悪影響があるのかということを確認することが第一の課題であると考えられます。

そこで当分科会ではこの分野をリードしておられる大阪大学の西原先生をお呼びして、酵母を用いた内分泌かく乱物質の in vitroBioassay 法を中心に、現在の in vitro 試験法の現状と課題について話してもらいます。

 みなさんこの分科会に参加して、内分泌かく乱物質について興味と理解を深めてみ ませんか?


オーガナイザー
津田 賢一(北海道大学・地球環境科学研究科・環境分子生物学講 座)


講演要旨

内分泌かく乱物質のin vitro Bioassay
講師:西原 力 先生(大阪大学大学院薬学研究科)

内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン;ED)問題における緊急課題のひとつはED容疑物質のリストアップであり、 そのための簡便・迅速なin vitro試験の開発である。 in vitro試験としては、競合結合性試験やレポータージーン試験やヒト乳がん細胞増殖試験などが開発されている。これらのほとんどはホルモンレセプターを介する作用発現プロセスに対するアゴニスト活性やアンタゴニスト活性を検出する系である。そこで、私たちが開発した酵母Two-Hybrid試験を中心としてin vitro試験について紹介し、ED研究の課題についても述べてみたい。
私たちは最近発見された転写共役因子(コアクベーター)がリガンド依存的にレセプターと特異的に反応することに着目し、 酵母Two-Hybrid Systemを用いた試験法を開発した(図1)。 本法は操作性も簡便で、 数時間でエストロゲン作用をはじめとするホルモン様作用を再現性高く検出でき、 作用発現機構の検討にも有用である。 アゴニスト活性だけではなく、 該当する本来のホルモンを共存させることによりアンタゴニスト活性が、 またS9Mixや活性汚泥で試料を前処理することにより、 体内・環境内代謝を考慮に入れた活性も検出できた。 これまで国内40以上の試験・研究機関で活用され、 天然成分、 医薬品、 農薬、化学工業品など、 500種類以上の化学物質についてエストロゲン作用を評価していいる。 その結果、64物質にアゴニスト活性が検出され、 4物質以外はパラ位に疎水性置換基をもつフェノール誘導体であった。
本法の今後の課題としては、高感度化、自動化、環境モニタリング等への適用などの改良、本法の結果に基づく構造活性相関法の開発、 作用機構の検討とその成果に基づく新試験法の開発などである。 これらの成果はEDをはじめとする化学物質のリスクアセスメントに貴重な知見となることが期待できる。
なお、ヒトおよび野生生物への影響の確認、暴露時期による感受性の差、感受性の種差、低濃度領域における用量相関性、複合作用、クロストークを含むEDの作用機構等に関する検討が当面のED問題における研究課題であろう。


図1