生命システムの理解へ向けて
〜目指せ!コペルニクス的転回!!〜
少し話は変わりますが、物理学における莫大なデータを体系化したのが、アイザック=ニュートンであり、アルバート=アインシュタイン。現在、ゲノム(部品)という生命科学にとっての基礎データの出現で、やっと体系化(システム情報の統合データベース化、統一理論提唱)できるかもしれないという状態になってきている。すなわち生命科学は、これからやっと大きく発展していく前段階にもうすでに来ているのではないでしょうか?
さらに、本田技研株式会社が植物遺伝子の研究に着手、IBMが遺伝子研究に乗り出すなど、ほとんどの場合、生物学分野外からの当分野への参入がめまぐるしい。これには様々な理由があるにしろ、生命科学分野がいかに今後魅力的な分野に成長する可能性を秘めているかを推察のは極めて容易。新しい価値観が新しい科学技術を生み、それが新たな市場開拓につながり、そこへ新たな産業が生まれて人々の生活は豊かになる。
私達が目指していく道とはいったい何なのか?についても余った時間で是非とも先生を交えて議論していきたいと考えています。当分科会が研究意欲を刺激、魅力的な本分野への研究者の再整備のきっかけ作りの一助となれば、これほど嬉しいことはありません。それでは、分科会でお会いしましょう。
研究テーマ(参考までに):
小長谷研究室
1. 分子生物情報処理(隠れマルコフモデル、遺伝的アルゴリズム)
2. 進化的システムに関する研究
3. コンピュータシステム(並列処理技術)
4. タンパク質立体構造解析システム
5. ゲノムデータベースからの知識発見
6. タンパク質立体構造予測法
7. DNA2次元電気泳動装置の開発と電気泳動像のコンピュータ自動解析システム
8. タンパク質2次元電気泳動像のコンピュータ自動解析システム
9. クライオ電子顕微鏡によるタンパク質単分子解析法
合原研究室
1. 脳における情報表現
2. 神経細胞における樹状突起のモデル
3. 記憶モデル
4. ニューラルネットワークの数理モデル
5. ニューラルシステムにおけるカオス
6. 脳の高次機能
7. 免疫系の数理モデル
8. 情報幾何学による力学系解析のための確率的手法による進化の仕組み
9. ウェーブレットによる時系列解析
オーガナイザー(所属先)
小葦 泰治 (OASHI, Taiji)
7月まで 京都大学大学院生命科学研究科高次生命科学専攻高次細胞制御学分野
8月以降 Mount Sinai School of Medicine Institute for Computational Biomedicine
New York University Courant Institute of Mathematical Sciences (Joint Ph.D. Program)
※おまけ※ 留学に興味のある方、なんでも結構です。どうぞ気軽に御相談ください。
遺伝子知識スパイラル:ポストシークエンス時代のバイオインフォマティクス
講師:小長谷 明彦 先生 (北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科、理化学研究所ゲノム科学総合研究センター)
一般に、生物学研究者は、実験→モデル化→実験と、研究者の経験的知識を中心に知識を体系化する傾向が強い。情報処理技術の活用は限定的であり、ゲノムデータベースに蓄積された知識を十分に活用しきれていないという問題を持つ。一方、情報処理研究者は、ゲノムデータベースからの知識発見や微分方程式などの数理モデルを用いたシミュレーションなど、計算機上に構築されたデータベースやプログラムを中心に生命知識を体系化しようとする傾向が強い。しかしながら、遺伝子そのものの知識知識の不足から、マイニング結果やシミュレーション結果に対する考察を十分におこなえていないという問題を持つ。別な言い方をすれば、生物研究は生得的に実験に基づく「暗黙知」を中心に生命現象を体系化しようとし、情報処理研究は生得的に計算機上にデータベースあるいはプログラムとして蓄積された「形式知」を中心に生命現象を体系化しようとする。遺伝子知識スパイラルでは、実験→知識発見→モデル化→シミュレーション→実験という一連のプロセスを循環させることにより暗黙知と形式知の知識創出を図る。実験→データマイニング→モデル化のプロセスは、生物学者個人が持つ「暗黙知」を、共有可能な「形式知」に変換する「表出」に相当する。知識発見は膨大なデータから有望な規則をシステマティックにスクリーニングするための手段であり、生物学者による解釈を経て、形式知として体系化される。モデル→シミュレーション→実験のプロセスは形式知を個人の暗黙知として獲得する「内面化」に相当する。シミュレーションは有望な仮説をシステマティックにスクリーニングするための手段であり、実験による仮説の検証を経て暗黙知として体系化される。一般に形式化された知識は蓄積しやすく、共有化されやすい。しかしながら、より本質的な深い知識は研究者の暗黙知として蓄積されている。遺伝子知識スパイラルでは両者の相互変換を促すことにより遺伝子知識の創出を図る。!
参考文献
[1] W.Weaver : American Scientist, 36, 536-544 (1948)
[2] 合原 編 : 「複雑系がひらく世界 - 科学・技術・社会へのインパク
ト」, 別冊日経サイエンス (1997)
[3] 合原, 相澤 編著 : 「カオス研究の最前線 - 非線形科学の世紀へ向け
て」, 別冊 ・ 数理科学, サイエンス社 (1999)
[4] 合原 : 「カオス学入門」,放送大学教育振興会 (2001)
[5] P.E.Rapp, T.I.Schmah, A.I.Mees : Physica D, 132, 133-149 (1999)