8月18日(日) 9:00-12:00
動物科学分科会 
-まだまだ疑問の多い動物の生命現象-

「クローンマウスの技術開発と解析および応用」

講師
若山照彦 先生

(理研、発生・再生科学総合研究センター ゲノムリプログラミング研究チーム、チームリーダー)


近年、核移植技術の発達により完全に分化した体細胞からもクローン動物を作ることが可能になった。しかしその成功率はどの動物種でも非常に低く、たとえ無事生まれてきても、奇形だったり原因不明ですぐに死んでしまうケースが多い。この低い成功率と高い死亡率の改善を目的として、これまでに我々は様々な方法でクローンマウスを作出してきた。核移植技術が不完全であるために生じる現象だと考えたからである。その結果、核のドナーマウスは近交系よりもF1からの方が成績がいいことや、ドナー細胞の細胞周期は特に影響ないこと、レシピエント卵子には未受精卵しか使えないことなどがわかってきた。しかしいずれも成功率の大きな改善には結びつかず、またクローンマウスからクローンを作ることを繰り返すと成功率が徐々に低下し、最終的にはクローンを作れなくなってしまうことから、我々が用いている核移植方法には何らかの問題があり、核移植を繰り返すとそれが蓄積されていくという可能性がしめされた。一方、作出されたクローンマウスを用いてさまざまな解析が進行中で、すでにクローンマウスの胎盤にはインプリンティング遺伝子の発現異常があることや、DNAメチル化パターンの異常などが報告されている。しかしこれらの解析結果は現象を深く調べただけで、いったいなぜ核移植によってそのような変化が生じてしまうのかを導き出すことは出来ていない。分化している体細胞の核を未分化な状態に戻すための核の初期化(genomic reprogramming)が不十分であるためなのか(技術の問題)、あるいはもともと大部分の体細胞には異常があり(生物学的な問題)、たまたま正常な体細胞を選んだ場合にだけ体細胞クローンに成功しているのかもしれない。しかし正常な細胞だけをピックアップすることが可能だとしたら、結局は技術の問題となる。一方、核移植によって作出したクローン胚を培養し続けると、約1割の胚は体細胞由来の核移植ES(ntES)細胞株として樹立することが出来る。我々は大人のマウスの尻尾からntES細胞を作出し、その性質が受精卵由来のES細胞と何ら遜色の無い物であることを明らかにした。またそれらの細胞株を培養条件下で神経細胞や心筋細胞へ分化させることにも成功した。ntES細胞は、現在盛んに研究されている再生医学への応用にも貢献すると思われる。本講演ではマウスのクローンに関しての現在までにわかっている知見を紹介する。


参考文献
Tamashiro KL,et al (2002) Cloned mice have an obese phenotype not transmitted to their offspring. Nature Medicine 8:262-267
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オーガナイザー 西村俊秀(名古屋市大・医学部・生化第2)