8月17日(土) 9:00-10:30
動物科学分科会(1)
 -まだまだ疑問の多い動物の生命現象-

乳腺の発達と免疫に関わるTNF-Rファミリーとその情報伝達

(RANKとCD40を中心として)

講師
西村俊秀 先生

(名古屋市立大学・医学部・生化第2)


私は大学院時代、畜産の研究室で「なぜお乳が出るか」という研究テーマで仕事を行っていました。しかし、ひょんなきっかけで私の研究が「免疫」や「情報伝達」そして「癌」というフィールドまで広がることとなりました。今回、「乳腺の発達と免疫を制御するTNF-Rファミリーとその情報伝達」という演題で私が研究してきたデータをお示ししようと思います。しかし単にデータを皆様にご覧になっていただくだけではなく、皆様には研究をやっていく楽しさというものをお伝えできないものかと考えています。研究を行い、ある疑問に取り組んでいると、その疑問を解くかぎが別の分野から現れる。また、一つの物質を出発点としても、いろんな取り組み方、研究の仕方がある。そんな学問の楽しさを少しでも皆様に知ってもらい、私の話が皆様の研究の糧となっていただければ幸いと考えています。

[研究概要]

乳腺は子供に栄養を与えるための器官であるが、免疫的にも重要な組織である。我々はリンパ球のリンパ節への遊走に関わるといわれている細胞接着分子GlyCAM-1 (Glycosylation-dependent cell adhesion molecule 1)とMAdCAM-1 (Mucosal addression cell adhesion molecule 1)が泌乳期の乳腺で発現することを見出した。GlyCAM-1は乳腺では免疫的な機能を持っていないが、MAdCAM-1は乳腺でもリンパ球の遊走を制御する分子であることが示唆された。

 TNF-R (Tumor necrosis factor- receptor)ファミリー分子は生体内で様々な機能を果たしている重要な分子である。近年、その情報伝達に関わる分子が次々と同定され、TNF-R > TRAF > NIK > IKK > IκB > NF-κBという膜タンパクから転写因子までの情報伝達経路の1つが解明された。実際のデータを踏まえながら、この情報伝達系路について解説する

 一方、我々はNIK (NF-kB inducing kinase)のミュータントマウスで乳腺の形態形成異常が存在することを見出した。TNF-Rファミリー分子の一つであるRANK (Receptor activator of NF-kB) のノックアウトマウスやIKKαのミュータントマウスでも異常が報告され、乳腺の発達にはRANKとその情報伝達が重要な役割を演じていることが示唆される。さらにこの情報伝達系はCyclin D1を制御することも報告された。Cyclin D1と乳癌との関連性を指摘する報告もあり、RANKの情報伝達系が乳癌と関連することも考えられる。

 また、TNF-Rファミリー分子の一つであるCD40は免疫反応において重要な機能を果たしている。CD40とCD154 (CD40L)との相互作用をブロックすると様々な免疫反応がおきなくなる。CD154は活性化したT細胞で発現が見られるが、CD40の発現はB細胞、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞と様々な細胞で観察される。今回、我々は上皮細胞で発現するCD40も細胞免疫に重要な役割を果たしていることを見出したので報告する。

オーガナイザー 西村俊秀(名古屋市大・医学部・生化第2)