第3回「Merck Award for Young Biochemistry Researcher」につきまして、2010年7月に開催されました選考委員会において厳正な審査が行われ、最優秀賞1名、優秀賞2名が決定致しました。
詳細は生化学若手の会のページ、もしくはMerck Japanのサイトをご覧ください。
本日6/21発売の実験医学2010 7月号(羊土社)にキュベット委員会が執筆・編集を行った記事が掲載されました。
ぜひ、書店で手にとって読んでいただければ、と思います。詳しい情報は羊土社のページをご覧ください。
生化学若手の会 京都支部企画
「初夏のセミナー」
日程:2010年5月15日(土) 13:30-16:50
場所:京大会館 212号室
http://www.kyodaikaikan.jp/access.html
プログラム:
13:30-15:00 行動リズムを制御する体内時計・視交叉上核
中村 渉先生(大阪大学大学院歯学研究科)
15:20-16:50 小胞体ストレス応答とゴルジ体ストレス応答
吉田 秀郎先生(兵庫県立大学大学院理学研究科)
17:00過ぎ 懇親会(実費:3500円程度)
セミナー終了後に懇親会を予定しております。
参加希望の方は小川(shu.ogawa6103@gmail.com) まで連絡先までお願いします。
(問い合わせ先・懇親会申し込み先)
小川 秀一郎<京都支部長>
京都大学医学研究科
E-mail: shu.ogawa6103@gmail.com
京都支部に関して:
http://www.seikawakate.org/content/view/30/54/
生化学若い研究者に関して:
http://www.seikawakate.org/
生化学若い研究者の会は,生命科学分野の研究者を目指す若手研究者や大学院生・学部生を中心に構成される団体である.その最大のイベントが夏の学校であり,毎年,全国各地から100人以上が集まり合宿形式の研究会が開催されている。2010年,夏の学校は記念すべき第50回の開催を迎える (http://www.seikawakate.org/) .
本稿では,生化学若い研究者の会と夏の学校の歴史を振り返りながら,これからの夏の学校になにが求められているのかを考えたい.
生化学若い研究者の会の活動の歴史に目を向けると,それぞれの年代での研究の動向や研究者にかかわる社会問題について積極的にかかわってきたことがうかがえる.夏の学校では,研究の動向について2つの主要な企画のなかであつかってきた.ひとつは,参加者全員が聴講し議論するシンポジウムである.”利益か? 真理か?―科学が追及するもの” (2002) など,生命科学にかかわる大きなテーマを複数の立場の演者の意見を交えて多角的な視点からとらえようとする試みや,”大学院で何を学ぶ? どう学ぶ? ” (2008) など,研究環境における教育問題を議論する試みがなされてきた.もうひとつは,個別の話題にそって学ぶ分科会 (2003年以降は,ワークショップと改称) である.参加者は興味のあるセッションに分かれて,第一線で活躍する講師による講義を聴講する.分野は多岐にわたり,分子生物学,神経科学,免疫学,再生医科学など,さまざまなテーマがあつかわれてきた.
一方,生化学若い研究者の会は研究環境をめぐる社会問題に対しても取り組んできた.とくに,1970年から1980年にかけて活動は活発となり,1973年には後援組織である日本生化学会に対して,いわゆる,オーバードクター問題についての要望を投げかけている.その結果,1974年には日本生化学会から日本学術会議にむけてオーバードクター問題についての申入れが行なわれた.また,女性研究者問題についても取り組んでいる.この問題については,大規模なアンケートを行ない,女性研究者自身および採用する立場への意識調査をして問題を的確にとらえるための行動をとってきた.その後,女性研究者の地位改善についての要望が日本学術会議から出されたり,全国シンポジウムが行なわれたりもした.これらを振り返ると,生化学若い研究者の会は研究現場の立場からその時代におけるもっとも取り組むべき課題をみつけ,解決にむけた行動を起こしてきたといえる.
研究の動向と研究環境をめぐる社会問題についての議論を50年という長きにわたってつづけてきたことは,生化学若い研究者の会の注目すべき特徴のひとつである.生化学若い研究者の会では,過去のスタッフや参加者と現役とが夏の学校に集まり,過去から現在,そして,未来をみすえた研究の動向と研究環境をめぐる社会問題についての議論を行なうことがこの特徴を夏の学校に生かす道だと考えた.今後,研究分野を担うことになる若手にとって,現在や未来の研究が過去の数々の発見の延長線上にあることを再確認することは,新たな視点を得るための重要なきっかけとなるのではないだろうか.また,現在の研究環境をめぐる社会問題について,当時の問題に全力で取り組んだ人たちからは,現役の世代とは違った視点から有用な意見が出てくるのではないだろうか.このような考えのもと,学部生からOB・OGまで幅広い層の参加者を予定した第50回夏の学校を企画中である.
生化学若い研究者の会は,夏の学校をはじめとしてさまざまなイベント活動を行なっており,1966年以来,40年以上にわたって本誌キュベット欄での執筆を行なってきた.埋もれがちな若手の声を研究者社会に汲み上げるという目的をもって,研究環境をめぐる社会問題の発信の役割を担ってきた.また,近年は,若手の情報発信を担う立場として新しい活動にも挑戦している.最近では,科学コミュニケーションや理科教育問題などにも活動の幅を広げ,科学書の出版 (光るクラゲがノーベル賞をとった理由,日本評論社) やサイエンスアゴラ (http://www.scienceagora.org/) への出展も行なってきた.本誌の休刊にともない,キュベット欄は一時休止となる.しかし,われわれは若手の情報発信を担う立場として,さらなる活動の場を獲得し、有意義な発信をつづけていきたいと考えている.
生化学若い研究者の会キュベット委員会
E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org
生化学若い研究者の会キュベット委員会では,ポスドク問題についての考察をつづけている.前号では,バイオ系産業などの規模の小さい産業のニーズに対して博士号取得者が供給過剰であり,産業構造に応じた博士課程定員の調整 (数の調整) が必要であることを提案した.今号では,理工系教育の見直し (質の調整) について論じたい.
バイオ系博士の就職難の原因のひとつとして,スキルが主要産業のニーズに合致していないという問題がある.バイオ系博士は分子生物学などの高度な専門性を持つ一方で,工業や化学,情報などの主要産業に通用するスキルをもっていないことが多い.これは,バイオ系ほどではないにしても,ほかの自然科学系の分野にもあてはまる問題であろう.このことから,理工系学生の工学,化学,情報などの理工系基礎学力を向上させることが必要であると考える.
理工系基礎学力が高いとどのような利点があるのだろうか.企業研究者として活躍する場面を想像してほしい.企業で採用され,はじめは大学院やポスドク時代に学んだ専門に関係する部署に配属されたとしても,定年まで同じ部署にいるとはかぎらない.多くの場合,企業研究者にはその時代の技術展開に応じたスキルチェンジが求められる.つまり,企業研究者には高い専門能力も重要であるが,それ以上に,スキルチェンジにたえられる理工系人材としての汎用性の高さが必要なのである.このとき役に立つのが,学生時代に学んだ理工系基礎学力だ.ところが,とりわけバイオ系博士はそれらの知識が十分ではなく,スキルチェンジに対応することがむずかしい.このことが,企業から敬遠される原因のひとつとなっているようである.
なぜ,バイオ系博士のスキルチェンジは困難なのか.たとえば,大学院進学の場面において,工学系や化学系,情報系を学んだ大学生がバイオ系の大学院に進学する例はよくあるが,バイオ系からほかの分野に進学する例は稀である.このことからも,バイオ系の学生のスキルチェンジが困難であることがうかがえる.工学の基礎である物理に注目しよう.バイオ系の学生は高校で物理を履修していない場合が多く,大学進学後も物理をほとんど学ばない.平成15年度の東京大学教養学部理科2類の1年生を例にあげると,高校で物理を未修の人向けの必修科目として,前期と後期にそれぞれ1回の物理の授業があるが,必修として課せられる分野は力学と電磁気学だけであり,波動や熱力学については選択科目でしかない※.もともと物理を苦手とする学生が,選択科目でわざわざ物理を選ぶことは期待できない.結果として,たとえば”ドップラー効果”など,日常的な物理現象すら知らないバイオ系博士もめずらしくない.これは東京大学にかぎった話ではなく,ほかの大学でも枚挙にいとまがない.
このような現状を鑑み,筆者らはつぎの提案をする.第1に,理工系の学部学科の垣根をとりはらって学部4年生までを教養課程とし,全ての学生に理工系基礎科目を必修科目として課す.これにより,高校卒業時に特定分野を選択しなければならない現状を是正し,幅広い知識をもつ理工系人材を育成することができる.第2に,専門課程を修士課程からとし,大学院入学試験を共通試験とする.これにより,大学院受験競争が過熱し,大学生は理工系基礎科目を”真面目に”勉強しなければならなくなる (同時に,これは学部受験競争を緩和する) .さらに,このことで,競争を勝ち抜いた大学院生の人材価値の向上が期待できる.もっとも,専門課程への進学時期を遅くすることは稀有な才能を埋没させてしまう懸念もあり,飛び級制度の積極的な拡大も必要と思われる.
近年,学際領域研究や産学連携の事例が増え,異なる分野の人材交流がさかんになっている.ポスドク問題を解決するだけでなく,社会に求められる理工系人材を育てることが大切なのではないだろうか.ただし,民間や教育現場でできることには限界がある.理工系教育の改革には様々な摩擦や抵抗が予想されるが,真の科学技術立国をつくるために,政府の勇気ある采配を期待したい.
生化学若い研究者の会キュベット委員会
E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org
第3回「Merck Award for Young Biochemistry Researcher」の要項
主催 メルク株式会社
後援 日本生化学会、生化学若い研究者の会
1. 趣旨
本賞は、将来を担う若い研究者のうち、生命科学分野において高い水準の研究活動を続け、かつ将来性のある者を表彰することにより、創造的な研究活動を奨励することを目的としています。
2. 応募内容
生命科学分野、特にプロテオミクス・タンパク質発現・がん・疾病研究関連の優れた研究論文
3. 応募資格
・ 大学院生,ポストドクター等の若手研究者であること。
・ 学術論文(査読付き)を2009年1月以降に発表していること、あるいは受理確認されていること。
・ 論文に、メルク (Calbiochem / Novagen)製品の使用が明記されていることが望ましい。
4. 表彰
受賞者は最優秀賞1名,優秀賞2名とし,最優秀賞奨励金10万円,優秀賞奨励金5万円とします。 奨励金の他に,生化学若い研究者の会 夏の学校参加費・旅費補助として別途5万円を支給します。 選考結果は,メルク株式会社及び生化学若い研究者の会のホームページで発表し,「生化学若い研究者の会 第50回生命科学夏の学校 (2010年9月3日(金)~5日(日)箱根高原ホテル( http://www.hakonekogenhotel.jp/ )」にて授賞式を行います。
5. 応募締め切り
2010年6月30日(必着)
6. 応募方法
メルク株式会社バイオ関連のホームページ( http://www.merck4bio.jp/ )の該当箇所よりExcelファイルの応募シートをダウンロードし、その用紙に必要事項を記入の上、応募論文の別刷りと業績リスト(A4判)を添付して郵送してください。
応募用紙のダウンロード(Excel)
7. 提出先
〒153-8927 東京都目黒区下目黒1-8-1 アルコタワー5F
メルク株式会社PC-LB内 Merck Award for Young Biochemistry Researcher事務局
8. 選考方法
応募のあった研究論文について、選考委員会において、厳正に審査・選考します。
選考委員長:
日本生化学会理事
岡山大学大学院自然科学研究科 バイオサイエンス専攻 教授
稲垣 賢二先生
9. 応募上の注意事項
・ 応募論文は原則として返却いたしませんのであらかじめご了承ください。
・ 他機関の賞への応募中の論文あるいは作品も応募することは可能です。ただし、その論文あるいは作品が他機関の同様の賞を受賞された場合は選考の対象外となります。
・「生化学若い研究者の会 第50回生命科学夏の学校(2010年9月3日(金)~5日(日)箱根高原ホテル( http://www.hakonekogenhotel.jp/ )」にて授賞式を行いますので,ご参加いただけることが受賞の前提になります。
10. 問合せ先
〒153-8927 東京都目黒区下目黒1-8-1 アルコタワー5F
メルク株式会社PC-LB内 Merck Award for Young Biochemistry Researcher担当係
Tel:03-5434-5034, Fax:03-5434-5076
E-メール:service@merck.co.jp
博士号取得者やポスドクの多くは定職に就くことがむずかしい.いわゆる”ポスドク問題”とよばれるこの問題は,”大学院重点化”や”ポスドク1万人計画”といった政策の失敗に起因する.これはもはや学生個人や民間レベルでどうにかできるものではなく,政府主導による抜本的な改革が求められている.
最近,国は100人程度のポスドクに持参金をもたせて企業に派遣するという事業をはじめた (科学技術振興機構) .また,6月6日の報道各社のニュースによると,文部科学大臣が全国の国立大学に博士課程の定員の削減を求めたという.政府ややっと重い腰を動かしてこの問題に取り組みはじめたのだろうか.しかしながら,博士号取得者はすでに数万人の規模で膨れあがっており,この程度の政策では焼け石に水といえる.
生化学若い研究者の会キュベット委員会では,学校基本調査 (文部科学省) や工業統計 (経済産業省) などを利用してポスドク問題について考察してきた.その結果,ポスドク問題の解決には,産業構造に応じた博士課程の定員の調整 (数の調整) と,理工系教育の見直し (質の調整) が必要なのではないか,という2つの考えにいたった.本稿では前者について議論し,後者については次号で議論する.
われわれは,まず,学校基本調査を利用して博士課程の学科系統を”電気通信・情報系”"機械系”"化学・材料系”"バイオ系”の4つに区分し,それぞれの博士課程に属する学生数を集計した.その結果,単年度の博士課程に在籍する約15000人のうち,電気通信・情報系博士は約1000人,機械系博士は約300人,化学・材料系博士は約500人,バイオ系博士は約8000人であった.残念ながら,学校基本調査では”分子生物学”などのバイオ系新興学科系統の多くが”その他”に分類されてしまい,正確な統計情報は得られない.これを勘案すると,実際には,バイオ系博士は8000人を優にこえていると思われる.
つぎに,博士号取得者の”受け皿”の状況を探ってみた.博士号取得者の就職先として有力なのは,一部上場企業の研究開発職である.これらを”電気・通信産業”"機械産業”"化学・材料産業”"食料品・医薬品産業”の4つに分け,それぞれの博士号取得者の新卒採用数を集計した.その結果,電気・通信産業では約100人,機械産業では約50人,化学・材料産業では約200人,食品・医薬品産業では約100人であった (就職四季報2009,東京経済新報社) .
では,バイオ系博士のうち,いったい何人が就職できるのだろうか.ポスドクへの就職人数を約2000人 (科学技術政策研究所の2006年度調査によるとバイオ系ポスドクは約6000人,平均任期を3年として概算) ,一部上場企業 (食品・医薬品産業) の新卒採用を約100人とすると,就職できるバイオ系博士は2000人強となる.つまり,”就職先がない”バイオ系博士は6000人程度と見積もられる.実際には,ベンチャーなどの未上場企業や文部科学省の統計には表われない”隠れポスドク” (パートタイムやテクニカルスタッフなど) ,医師,大学教員などに就職する者も存在するので,全員が路頭に迷うわけではない.しかし,化学・材料系博士について同様の試算をすると,”就職先がない”人数はゼロであった.このことから,少なくとも化学・材料系博士に比較すると,バイオ系博士の就職状況はきびしいものであることが示唆される.
バイオ系博士は明らかに供給過剰であり,早急に削減する必要があると思われる.そもそも,バイオ系製造業の従業員数は全業界の15%程度でしかなく,博士号取得者が過剰となることは事前に予期できたはずだ.これからの博士課程の運営には,博士号取得者の就職先に配慮して分野ごとに個別の対応を行なう”産業構造に応じた博士課程定員の調整”が重要であると考えられる.
次号では,さらに,”理工系教育の見直し”について論じる.
生化学若い研究者の会キュベット委員会
E-mail:pne-cuvette@seikawakate.org