summer school 2005 symposium


生物間コミュニケーションは、細胞を語る
〜免疫・共生研究からみえてきた生命機能〜


オーガナイザー:( 総括 ) 田中靖文 ( 前半 ) 片山健太 ( 後半 ) 渡辺愛

(オーガナイザー:片山健太)
人は1人では生きていけない。そして、生物も1つの生物だけでは生きていけない。 生物と生物の境界では、それぞれの生物と環境ストレスが時にせめぎ合い、時に相利 共生することでより過酷な環境へと立ち向 かい、生命を切磋琢磨している。にも関 わらず、これまでの分析的な生化学は、その解析の難しさから、主に1つの生物の 「内部」にある生命共通の機構について探りがちであった。が、ヒトゲノム解読に象 徴されるポストゲノム時代においては、それぞれの種独自の機能や、生物間の相互作 用とし て、「外側」に向けた機能が非常に重要なテーマとして確立してきている。 そこで今回のシンポジウムでは、「免疫」や「病理」、「共生」といったそれぞれの 分野で「生命と生命の格闘」を見続けてきた4人の先生方にご講演いただく。格闘の 末見えてきたものは、、、 なんと生命を構成する細胞自身の見逃されてきた新たな 機能だったのである。

(オーガナイザー:渡辺愛)
生体のホメオスタシスを維持する上で、免疫系は外部からのさまざまなストレスに対 応する巧妙な機構を備えもっています。免疫系に多様性をもたらす機構の1つがリン パ球抗原受容体遺伝子のV(D)J 組換えです。最近の研究から、インターロイキン7レ セプター(IL-7R)を介するシグナルがT細胞抗原受容体γ鎖遺伝子のクロマチン構造 の変換を制御していることがわかってきました。この免疫系のエピジェネティック制 御について、京都大学ウイルス研究所の生田宏一先生にご講演いただきます。また、 体内で発熱、炎症、痛み、アレルギー、睡眠など多彩な生理機能に関係する生理活性 物質としてプロスタノイドが知られていますが、その受容体欠損マウスの解析から、 プロスタノイド受容体を介するシグナルが粘膜での免疫制御や I型アレルギー、細菌 などへの感染ストレス、環境ストレスなどに対する生体反応の調節に重要 な役割を果たすことがわかってきました。治療薬開発への期待も高いこの研究につい て京都大学大学院医学研究科の成宮 周先生にご講演いただきます。


【難波成任先生】

動植物の細胞内に感染し宿主交代する
最少ゲノム生物「ファイトプラズマ」



文明の急速な進歩とともに、我々は豊かで便利かつ快適な生活を送れるようになった。しかし、それと引き換えに資源の枯渇という切実な問題に直面している。世界の人口は今や60億に近い。2020年には100億前後に達するであろうといわれており、食糧の総量はいずれ人類を支えられなくなるであろう。一方、世界中の可能作物生産額の約15%が病気により失われている。これは、年間8億人以上の人口を養える量である。 世界中で、多くの園芸植物や食糧作物に黄化・萎縮・叢生・てんぐ巣・花の葉化・緑化など特徴的な症状を引き起こし、農業上大きな被害をもたらす病気は、「クワ萎縮病」や「イネ黄萎病」・「キリてんぐ巣病」などいわゆる「萎黄叢生病」と呼ばれる一群の病気として我が国のみならず世界各地で古来より数多く知られていた。害虫の一種であるヨコバイ等の昆虫により媒介され、植物から植物へと伝染する。しかし、この病原体は滅菌するための濾過用のフィルターを通り抜けることから、永いことウイルス病と考えられてきたがどうしてもその実体を捕らえることは出来なかった。ファイトプラズマは、1967年に世界に先駆けてわが国で発見されたこれまでになかったタイプの病原体である。ファイトプラズマは植物の篩部細胞や昆虫の細胞内に生息する細胞壁を欠いた多形性の細菌で、一般細菌とウイルスの中間的な大きさ(径200-800 nm)の微生物であり、発見から約40年を経て、なおこれまで培養に成功していないことから、防除や治療法の確立は遅れていた。しかし依然としてその被害は拡大している。世界中でココヤシが枯死し、ひどい国では95%が枯死している。桐材に使用されるキリでも大きな被害を生じており、特に2300年以上栽培されてきた中国では大量に枯死している。ファイトプラズマは36種あまり知られているが、その全ゲノム解読(Phytoplasma asteris:世界最大のグループ)が昨年初めて完了した。

生物は遺伝情報をどこまで減らせるのか? ?? 驚くほど少ない
ファイトプラズマのゲノムは、最少遺伝子セットを持つモデル生物とされるマイコプラズマゲノムに認められる重要な遺伝子群や、生物に必須とされる遺伝子群も一部欠いていた。このことから、ファイトプラズマは動植物に感染する生物でありながら、極限にまで遺伝情報を切りつめた細菌といえる。「ファイトプラズマ」は、通常の細胞が保持している生合成能のほとんど全てを捨て去ってしまった。この生命体は、植物に病気を引き起こすような寄生生活を長い間送っていたため、栄養分を得るために働く必要がなかったのである。非常に不思議なことに、ファイトプラズマは一般のバクテリアが宿主から収奪しているような栄養分を、あえて取り込むことすらしていない。ファイトプラズマは、感染した植物細胞内から全く別の種類の栄養分を収奪することにより、通常とは異なる生き方を見つけたのかもしれない。

動植物ウイルスの祖先と思われるプラスミドを持っている
ファイトプラズマは、これまで例のないタイプのプラスミドを2種類持っている。ひとつは植物ジェミニウイルス複製酵素と似た複製酵素を持っている。もう一つは細菌プラスミドの複製酵素と動植物ウイルスのサーコウイルスやナノウイルスのヘリカーゼ部分を併せ持った複製酵素をコードしている。真核生物の1本鎖DNAウイルスは原核生物のプラスミドから進化したとされるが、それを証明する証拠はこれまでなく、このプラスミドは両者をつなぐ『ミッシングリンク』である可能性がある。

膜表面に提示される主要抗原タンパク質により媒介昆虫を選んでいる
ゲノム解析から物質輸送に関わるタンパク質など多数の膜タンパク質遺伝子が見つかった。これらのタンパク質は、ファイトプラズマの細胞表面に存在すると考えられる。ファイトプラズマはそれぞれ固有のヨコバイにより媒介される。これらのタンパク質が媒介昆虫の特異性に関係している可能性が高い。

ファイトプラズマのゲノムには300以上の機能未知の遺伝子が潜んでいる
多くの細菌が持っている毒素遺伝子や病原性遺伝子はファイトプラズマには無く、それらとは全く異なる仕組みで植物に病気を引き起こすと考えられる。ファイトプラズマ病は、日常、我々の身近に頻繁に見られるが、その特徴的な病徴から、花が緑色の葉になるアジサイのように、商品価値を認められ、品種登録された例もある。またポインセチアでは、花をたくさんつけ、枝分れが豊富で、矮性型の場所を取らない人気のタイプがファイトプラズマ感染によると言うことは余り知られていない。

このように、ファイトプラズマは極めてユニークな微生物であるが、その病理の解明は新たな発病のメカニズム、宿主決定の分子機構、植物の進化に与えた影響など、興味深い事実を明らかにすることが出来るものと思われる。これまでに明らかになった最新の知見を紹介する。

http://papilio.ab.a.u-tokyo.ac.jp/planpath/


【林誠先生】

植物と土壌微生物の共生
〜陸上の生物相を形作ってきたもの〜



 海洋から陸上へと最初の植物が進出したとされる4億年前、現在の陸上植物の大部分に見られる土壌微生物「菌根菌」との相互作用が始まった。アーバスキュラー菌根菌(ここでは単に菌根菌という)は植物の根に細胞内共生し、植物の水分・養分(特にリン)の吸収を助け、見返りとして植物から光合成産物を受け取ることで相利共生を成立させている。太古の陸上における過酷な環境を生き抜くために、植物と菌根菌との共生は必須であったと考えられている。したがって、今、地上で見ることのできるランドスケープはこの共生から始まっているといっても過言ではない。菌根菌が文献に初めて登場するのは1885年のことだが、分子レベルでメカニズムが解明され始めたのはごく最近である。ここでは植物の持つ、菌根菌との共生に必要な遺伝子とそのシグナル伝達経路を軸に、共生の進化を眺めてみたい。
 菌根菌は糸状菌の仲間であり、その中でもかなり特徴的なグループを成している。多核であり、単独培養できず(絶対共生菌)、かつ形質転換が不可能であることから、菌根菌の分子遺伝学的解析は進捗しなかった。また、共生のホストである植物側からのアプローチも、共生による植物の生育促進は相対的な尺度でしか測定できず、変異体の選抜は最終的に顕微鏡下でおこなう必要があるためにその単離が困難であった。しかしながら1989年に菌根菌と共生できなくなるような変異体Myc-が報告された。それは根粒菌との共生が不全になった植物であった。根粒菌とは、マメ科植物と細胞内共生し、根に形成された根粒中で大気中の窒素を固定する土壌バクテリアである。この場合、土壌に窒素肥料を与えない状態で根粒菌を接種することで容易に変異体の選抜が可能なことから、従来から多くの変異体が単離されてきた。その中でも根粒の発達の全く見られないNod-変異体の多くが菌根菌との共生も破綻していたのである。菌根菌・根粒菌双方の共生に必要な一連のシグナル伝達経路をCommon Signaling Pathway(CSP)と呼ぶ。この数年、マメ科モデル植物のミヤコグサ・タルウマゴヤシのゲノム解読が進んだおかげで、CSPに関わる遺伝子が徐々に同定され始めてきた。
 根粒菌は植物の根からの滲出物質、フラボノイドを受容し、感染シグナルであるノジュレーション・ファクター(NF)を分泌する。NFを受容した植物は、CSPを通じて根粒の発達と細胞内共生に必要な遺伝子を発現させると考えられている。先に述べた理由から、菌根菌の感染シグナルMFは未だ同定されていない。2002年に世界で初めて報告された、菌根菌との共生に必要な因子はSYMRK、レセプター様キナーゼ(RLK)であった。これは細胞外にLRRドメインを、細胞質側にS/Tキナーゼドメインを有している。SYMRKのリガンドは明らかではないが、MFである可能性は捨てきれない。キナーゼドメインは分子間自己リン酸化によって活性化し、したがってSYMRKはホモダイマーを形成していると考えられている。また、推定NF受容体についてはその翌年、NFRとして同定されており、これは細胞外にLysMドメインを、細胞質側にはS/Tキナーゼドメインを有するRLKである。NFRに変異が生じても菌根菌との共生は正常なことなどから、NFRはCSPの上流に位置すると考えられている。
 NFR、SYMRKが細胞外のシグナルを細胞内に伝達するための重要な因子であることが判明し、次に細胞内シグナル伝達はどのように実行されているのだろうという疑問が生じる。1996年、NFを与えた根毛細胞でカルシウムイオンの特徴的な周期的増減が生じることが明らかにされた。このカルシウムスパイキングは一部のNod-Myc-変異体では観察されず、残りのNod-Myc-変異体では認められることから、カルシウムスパイキングは菌根菌・根粒菌の感染シグナル伝達に重要な役割を果たしていると推測された。我々はカルシウムスパイキングを示さないミヤコグサのNod-Myc-変異体からCASTORを同定した。興味深いことに、このタンパクにはホモログPOLLUXが存在し、そのいずれかに変異があれば変異表現型を示した。これらは4回膜貫通型推定イオンチャネルであり、GFP融合タンパクはプラスチドに局在していた。細胞内シグナル伝達におけるプラスチドの役割は全く明らかになっていなかった。両者がカルシウムチャネルとしてスパイキングに直接関与するのか、あるいは他のイオンを通じてこれを制御しているのか、これから解決すべき問題である。
 ところで、いったんカルシウムスパイキングに変換された感染シグナルは、次にカルシウム・カルモジュリン依存型キナーゼCCaMKによってリン酸化カスケードに再変換され、最終的に転写因子によって共生遺伝子の発現に結びつくと予想される。そこで、ミヤコグサのMyc-変異体の中から根粒形成の抑制されるステージが最も遅い唯一のFix-Myc-変異体に注目し、その原因遺伝子を同定することにした。CYCLOPSに変異が生じると、菌根菌の場合は樹枝状体と呼ばれる、水分・養分の供給に必要な細胞内構造を形成できない。根粒菌の場合は感染糸と呼ばれる、根毛細胞に形成される細胞内共生に至る物理的な細胞内感染経路を誘導できない。このタンパクはC末にヘリックス・ターン・ヘリックス構造を持ち、さらにGFP融合タンパクを用いた解析によって、核に局在することが判明した。また、CSPの下流で働く根粒形成遺伝子NINおよびENOD40の発現を誘導していることが明らかとなった。したがって、CYCLOPSはCSPの最下流に位置し、共生遺伝子の発現制御に重要な役割を果たしているとともに、共生菌が細胞内に侵入する際に必要な因子であると考えている。
 さて、根粒菌との共生から垣間見た菌根菌との共生で、感染におけるシグナル伝達機構の概要は解明されつつあるが、これが全てではないのは明らかである。Nod-Myc-変異体の中で最も重篤な表現型は付着器の異常と内生菌糸の発達阻害であり、それ以前の、外生菌糸の発達や付着器の形成に関与する遺伝子は同定されていない。また後期の、樹枝状体における物質の収受に関与する変異体もしかりである。これはすなわち、これらの遺伝子の変異がNod+Myc-になり、従来の変異体選抜方法では単離できないことを意味している。裏を返せば、根粒菌は菌根菌との共生に必要なシグナル伝達経路の「一部」を流用して共生を成立させていることになる。マメ科植物と根粒菌との共生は6000万年前に始まったといわれ、その時点で既に確立されていた菌根菌共生シグナル伝達経路と「何か」他の経路を組み合わせることによって、マメ科植物は根粒菌との共生を築き上げたのかも知れない。


【生田宏一先生】:

免疫系の多様性獲得機構
〜エピジェネティクスでどこまでわかったのか〜



研究内容紹介
 免疫系は、宿主と病原微生物の激しい生存競争の最前線で進化した結果、我々の想像をはるかにこえた巧妙な制御機構をそなえています。 したがって、免疫系は、感染に対する生体防御という点で重要であるのみならず、研究対象としても、予期せぬ発見が続くテーマの宝庫といえます。 私達の研究室では、この免疫系を対象として、医学・生物学において普遍的な原理・原則を明らかにすることを目指しています。
これまでの私達の研究室の成果として、大きく2つ挙げられます。一つは、リンパ球の初期発生の研究でして、胎児期と成体期の幹細胞では胎児型リンパ球 に分化する能力が異なっているということです。いいかえれば、幹細胞といえどもその性質が変化する、いわば、老化するということです。二つ目には、インタ ーロイキン7というサイトカインが、リンパ球抗原受容体遺伝子のDNA組換えを、クロマチン構造を変えることにより制御することを明らかにしたことです。いずれの研究も、 医学・生物学の根幹にかかわる問題といえます。
このような流れを受け、現在、私達の研究室では、免疫系の構築と免疫応答の制御機構について、 (1) 造血幹細胞からの免疫系細胞の運命決定の分子機構、(2) クロマチン構造変換によるリンパ球抗原受容体遺伝子の組換え制御機構、(3) サイトカインレセプターの発現制御と免疫応答の調節、などの研究をおこなっています。生命科学・医学の分野で、ユニークな研究を積極的に志向する大学院生・研究員を募集しています。詳細はhttp://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/ikuta.htmlをご覧下さい。

講演要旨

演題: 免疫系の多様性獲得機構
〜エピジェネティクスでどこまでわかったのか〜

 リンパ球抗原受容体遺伝子のV(D)J組換えは、リンパ球の分化の過程で、細胞系列ならびに分化段階特異的に厳密に制御されている。これは、ある染色体領域が組換え酵素に対してaccessibleかどうかによって決まると想像されている。しかしながら、最近までその分子レベルでの実態は必ずしも明らかではなかった。
インターロイキン7レセプター(IL-7R)欠失マウスでは、T細胞抗原受容体γ鎖(TCRγ)遺伝子の組換えがブロックされており、γδ細胞が完全に欠落している。これは、IL-7Rのシグナル分子のStat5が、転写共役因子によるヒストンのアセチル化を介してTCRγ遺伝子のクロマチン構造を緩め、組換え酵素のaccessibilityを増大させていることによる。このIL-7RによるTCRγ遺伝子座の組換え制御システムは、V(D)J組換えにおいて細胞表面からクロマチンまでその精細な機構が明らかとなった最初の例である。  
造血幹細胞から多種多様な血液細胞が整然と分化する姿に魅せられて、20年以上になる。この間のさまざまな試行錯誤もまじえて、免疫システム生成機構研究の一例をお示ししたい。


【成宮周先生】

プロスタノイド受容体によるホメオスタシス制御とその破綻


動物個体は、内外の多様な刺激に対して体内の様々な機構を動かし生体ホメオスタンスを維持している。 その一つがプロスタノイドによる制御である。プロスタノイドはプロスタグランジン(PG)D2、PGE2、PGF、PGI2、 トロンボキサン(TX) A2などより成るが、体内では8種類の受容体に結合しその作用を発揮する。これらは、PGD受容体 (DP)、4種類の PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGF受容体 (FP)、PGI受容体 (IP)、TXA受容体 (TP) である。我々は これら8種類の受容体のそれぞれをクローニングし、各々を欠損したノックアウトマウスを作成して個々の受容体の機能を 解析してきた。プロスタノイドは刺激に応じて合成放出され、局所のホメオスタシスの維持に働くとされているが、受容体欠損 マウスの結果より、これらが体内の様々な場所で多様な働きをなしていること、この欠如が色々な病態となって現れることが 明らかとなった。例えば、EP4受容体欠損マウスの実験より、この受容体が腸において、粘膜上皮のintegrity の維持と粘膜固 有層での免疫抑制を行っていること、この破綻は、炎症性腸疾患に対する感受性の上昇となって現れることを見出した。これに 対し、同じPGE2に反応する受容体であっても、EP3経路は、I型アレルギー反応を抑制しており、この欠如は、アレルゲンに対す る過剰反応を惹起する。I型アレルギーに属する気管支喘息では、プロスタノイド生合成を抑制するアスピリンによって発作が惹起 されるアスピリン喘息の存在が知られており、上記結果は、アスピリンによる発症機序としてEP3経路の抑制があることを示唆してい る。また、TXA2-TP経路が、リンパ節における樹状細胞-T細胞相互作用をネガティブに調節し、これにより免疫反応の程度を調節し ていること、このため、この経路の破綻は、過剰な免疫反応となって現れることも明らかとなった。さらに、各種EP欠損マウスに細菌 内毒素(LPS)などの感染ストレスや新奇環境や未知個体への暴露といった環境・社会ストレスを加えることにより、PGE2-EP受容体経 路が、発熱やACTH放出といった身体的ストレス反応のみならず、環境や社会ストレス下での動物の行動を調節していることも明らか となった。この経路に欠陥があるとストレスに対して暴発的な攻撃性が誘発される。

「文献」
1. Narumiya, S., Sugimoto, Y. & Ushikubi, F. Prostanoid receptors; structures, properties and functions. Physiol. Rev. 79,1193-1226 (1999)
2. Ushikubi, F. et al. Impaired febrile response in mice lacking the prostaglandin E receptor subtype EP3. Nature, 395, 281-284 (1998)
3. Matsuoka, T. et al. Prostaglandin D2 as a mediator of allergic asthma. Science, 287, 2013-2017 (2000)
4. Mizoguchi, A. et al. Exclusive localization of prostaglandin D receptors to arachnoid trabecular cells in mouse basal forebrain and its involvement in the regulation of non-rapid eye movement sleep. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 11674-11679 (2001)
5. Kabashima, K. et al. The prostaglandin receptor EP4 suppresses colitis, mucosal damage and CD4 cell activation in the gut. J. Clin. Invest., 109, 883-893 (2002)
6. Matsuoka, Y. et al. Impaired adrenocorticotropic hormone response to bacterial endotoxin in mice deficient in prostaglandin E receptor EP1 and EP3 subtypes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 4132-4137 (2003)
7. Kabashima, K. et al. Prostaglandin E2-EP4 signaling facilitates initiation of skin immune response by regulating Langerhans cell migration and maturation. Nature Med., 9, 744-749 (2003)
8. Kabashima, K. et al. Thromboxane A2 modulates dendritic cell-T cell interaction and regulates acquired immunity. Nature Immunol., 4, 694-701 (2003)
9. Kunikata, T. et al. Suppression of allergic inflammation by the prostaglandin E receptor subtype EP3. Nature Immunol. 6, 524-531 (2005)


【難波成任先生】
略歴

1977年 東京大学農学部卒業
1982年 東京大学大学院農学系研究科修了
1982年 日本学術振興会奨励研究員
1985年 東京大学農学部助手
1989年 コーネル大学客員研究員
1992年 東京大学農学部助教授
1995年 東京大学農学部教授
1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
2004年 東京大学大学院農学生命科学研究科教授

専門
植物病理学

趣味
ハイキング・採集

研究内容
植物病原微生物(ウイルス・ファイトプラズマ・糸状菌)の病原性・宿主決定の分子機構、耐性戦略の構築

若手科学者に一言
時流に流されないで欲しいと思います。皆同じことをしていたら個性はなくなります。自分が素直に面白いと思うことをするべきだと思います。 また、何かをするチャンスを得ることが重要ではなく、そのチャンスを得たあと何をするかが大切だと思います。


【林誠先生】
略歴:

1966年 東京生まれ

1991年 東京大学理学部卒
1996年 東京大学大学院理学系研究科修了

1993年 日本学術振興会特別研究員
1996年 理化学研究所基礎科学特別研究員
1997年 大阪大学大学院工学研究科助手

専門
植物の分子遺伝学 ・生理学・形態学

趣味
読書、音楽

研究内容
根粒菌がマメ科植物に感染するときに、根毛から皮層にかけて「感染糸」という植物由来の筒状構造が誘導されます。感染糸の発達に先立って、根毛は根粒菌を包み込むように変形します。根毛変形と感染糸形成に注目して、それらに関わる遺伝子、植物ホルモンなどの研究をおこなっています。

若手科学者に一言
5年前にミヤコグサを扱い始めたとき、まず始めにしたことが感染過程を顕微鏡で観察することでした。その時に見た切片の美しさを未だ忘れることができません。みなさんにお伝えしたいことは「感動と興奮を大切に」ということです。


【生田 宏一先生】
略歴

京都大学ウイルス研究所 生体防御研究分野 教授
ikuta@virus.kyoto-u.ac.jp
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/ikuta.html

略歴
1983年 東京大学医学部卒業
1987年 京都大学大学院医学研究科博士課程修了
1987年 熊本大学医学部付属免疫医学研究施設助手
1988年 スタンフォード大学医学部博士研究員
1992年 東京大学医学部客員助教授
1996年 京都大学大学院医学研究科助教授
2002年 京都大学ウイルス研究所教授

専門分野
造血幹細胞からのリンパ球の運命決定機構

趣味
山野の散策、鴨川べりのジョギング、読書

若手科学者に一言
 博士課程大学院2年の時、教授から与えられたT細胞抗原受容体遺伝子に関するプロジェクトを進めている過程で、本来の目的とは無関係ですが 予期せぬ結果を得たことがありました。その後、プロジェクトを終えた時に、この意外な結果をさらに解析することを指導教授にお願いし、やらせてもらいました。 この新たな仕事は、その後、ささやかですが小さな論文にまとめることができました。この経験を通じて、どのようにして仮説を立て、実験・検証し、 論文にまとめるかを学んだと思います。研究室の若い人たちによく話していることですが、大学院の間にささいなことでも何か自分で気が付いたことを、 大切にして発展させることを薦めています。
ポスドクとして米国に留学中、マウス胎児肝臓の造血幹細胞を精製・解析するプロジェクトを始めました。同じ研究室に私より半年早く留学されていた先輩が、 留学前に作製されていたモノクローナル抗体を使うことができたおかげで、幹細胞の精製法をすんなりと確立することができました。しかし、 その後なかなか進まなかったのですが、そうこうしていると、ボスが、「もう胎児型γδ細胞の分化を調べたかい」、と尋ねてきました。 このために必要なモノクローナル抗体は、他大学のある研究室だけが持っていまして、なかなか入手が難しい状況でした。そのような時、 たまたま友人と雑談していると、同じフロアーの彼の研究室で最近同じ抗体を開発した人がいるということを教えてくれました。そして、この2つの 抗体と1つのアイディアのおかげで、その後私の仕事は大きく発展しました。プロジェクトが大きく進む時には、このように自分の力だけではどうする こともできない複数のよい巡り合わせに恵まれることが多々あります。そして、このような「生きた情報」は人と人の直接の結びつきから得られるものでして、 その重要性は、現代のようにあらゆる情報がインターネットを介して瞬時に入手できるかのように思える時代にこそ大きいと言えます。研究室の若い人たちに よく話していることですが、大学院の間に、所属する研究室だけではなく、専門分野が少し異なる近辺の研究室の同輩や先輩とできるだけお友達になって下さい (夏の学校に来られている方は心配ないでしょうが)。一人の人間があつかえる情報量はきわめて限られていますが、自分が知らないことをよく知っている人をた くさん知っていればいいのです。そういう意味において研究活動はとてもヒューマンなものだと思います。


【成宮周先生】
1. 略歴

昭和48年9月 京都大学医学部卒
昭和54年5月 京都大学大学院医学研究科修了
昭和54年 5月 英国ウェルカム研究所研究員
昭和56年 2月 京都大学医学部 助手(医化学第一講座)
昭和61年 4月 京都大学医学部 助手(薬理学第一講座)
昭和63年 1月 京都大学医学部 助教授(薬理学第一講座)
平成 4年 1月 京都大学医学部 教授(薬理学第ニ講座)
平成16年10月 京都大学医学研究科長・医学部長

所属学会
日本生化学会、日本薬理学会

2. 研究テーマ
30歳台後半より、プロスタグランジン受容体の研究と低分子量G蛋白質Rhoの研究の2つを続けている。前者は、各々の受容体の個体全体での働きを解析するもの、後者は、接着、移動、分裂、がん化といった細胞の素過程の解析を中心とするもので、私の生理学や病態への関心と細胞生物学への興味を二つとも満足させるもので、楽しい研究生活を送っている。

3. 若手へのメッセージ
最初は誰でも素人ということを言いたい。なじみが無くても、また、難しそうに思っても、それが自分にとっても、サイエンスにとっても大事なテーマであれば、臆せずチャレンジして欲しい。


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