豊島先生要旨
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微小管モータータンパク質の動き
豊島陽子(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系)
生物が無生物と違って生き生きとしてみえるのは、動くからである。筋肉による運
動だけでなく、細胞レベルでは細胞分裂や細胞内物質輸送など、動物、植物を問わず、
生命活動に必須の運動を行っている。これらの運動の原動力は、ATPの化学エネルギー
を力に変換するモータータンパク質と、アクチンや微小管などの細胞骨格フィラメン
トとの間の相互作用である。
微小管系のモーターであるキネシンとダイニンは、微小管をレールとしてその上を
動いていくことが知られている。近年、種々のキネシン様タンパク質がみつかり、細
胞内の物質輸送や細胞内小器官の配置、染色体の移動のしくみが明らかになりつつあ
る。ここでは、キネシンとダイニンの分子の特徴と、最先端の運動測定技術によって
明らかになってきた分子レベルでの運動の特徴について紹介する。
キネシンは、モータードメインのサイズが小さく(約 350kD)、遺伝子からのアプロー
チが容易である。キネシンの運動の特徴は、1分子でも微小管上を連続的に(数百歩
も)運動を続けられることである。さらに興味深いことに、モータードメインが非常
によく似ているにもかかわらず、キネシン様タンパク質の中には、微小管上をキネシ
ン(+端へ動く)とは反対に−端に動くものがある。
ダイニンは、モータードメインのサイズがキネシンの10倍以上もあり、1つのモー
タードメインにATP結合部位を4つ持つ、巨大で複雑な分子である。ダイニンはキネ
シンと異なり微小管上のプロトフィラメントに沿わず、フロッピーな動きを見せる。
ダイニンはその種類によって、高濃度ATP存在下では運動しないが低濃度ATPではよく
動くもの、ATP非存在下では微小管と結合しないもの、微小管をその軸の周りに回転
させる(あるいは微小管の周りを廻る)ものなどがあり、従来のモータータンパク質
の作用メカニズムでは説明できない。
- プロフィール:
豊島陽子(とよしま ようこ)
- 修士課程では鞭毛運動の解析、
博士課程ではダイニンの生化学的な研究を行った。
お茶の水女子大学の助手在職中に、米国スタンフォード大学医学部Spudich研究室、
英国ケンブリッジ分子生物学研究所Kendrick-Johns研究室に留学し、ミオシンの再構
成運動系の開発に従事した。1993年より東京大学大学院総合文化研究科に奉職。顕微
鏡下で分子が動くのを見るのが好きで、ダイニン、ミオシン、キネシンと代表的なモー
タータンパク質を手がけてきた。タンパク質の中に生き物らしさを追求したいと思っ
ている。
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